ライフスタイル

2018.07.29 15:00

深く激しい海峡でムチムチに鍛えられた、真夏の明石タコ天

(c)高田サンコ/講談社

(c)高田サンコ/講談社

さっきまでウネウネと動き回っていたタコ。ぐらぐら沸いた鍋に入れられると、瞬く間にあずき色に変わる。それでもう茹で上がり。スライスし、衣をつけ、油にジュワッ!
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日本一と噂の「明石ダコ」が天ぷらに。いただきます!

あつあつの衣がサクッ。すぐにぎゅむと弾力を感じる。でも硬くなく、むしろ柔らかい。太い脚が特徴の明石ダコは、熱を加えすぎると固くなってしまう。そのため茹でて揚げても中は半生状態で仕上がっている。これは新鮮な明石ダコをおいしく食べる方法の一つ。

それがたまらない食感で、さらに噛めば噛むほど、タコのうま味があふれてくる。絶妙な塩気に後を引かれ、黙って次のタコ天を口へ放る。ぎゅむぎゅむ、もぐもぐ。放る、放る、止まらない!
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明石ダコが格別な理由

初夏。月刊ヤングマガジンで連載していた「海めし物語」の明石ダコの取材に、兵庫県の明石浦漁業協同組合へおじゃましました。まず驚くのがプールのように広がる巨大な生け簀。不思議と魚臭さがなく、爽やかな潮風が吹きます。

こちらの漁協ではなんと活魚の競りが基本。魚を生かしたまま扱う理由は、一晩休ませて漁獲時の疲れやストレスを取り、うま味成分を回復させるため。そして“活け締め”することで魚体への負担を最小限に、うま味を損なうことなく鮮度を保たせるため。

漁師さんや漁協の職員さんが魚一匹一匹を丁寧に扱うことで活魚の競りが可能になり、高品質の魚を出荷できるのですね。全国的にも珍しい漁協だといいます。

その明石浦漁協の目の前の明石海峡で漁獲されるマダコは“明石ダコ”と呼ばれ、そのおいしさは日本一とも。もちろん漁協ではタコもビンビンに生きたまま。

明石ダコのおいしい理由は、その生息環境にあります。本州と淡路島の間の明石海峡(最狭部3.6km)の海の中は、まるでグランドキャニオンのように断崖絶壁の地形で最深部は110m。この明石海峡が生み出す激しい潮流は、明石ダコの脚を太く締まりよく鍛え上げるのです。

さらに地形と潮流により海底の養分が巻き上げられ、プランクトンがよく増えます。すると生き物が集まりやすく、明石ダコの豊富な餌となります。

明石ダコが特においしいのは5~8月ころ。産卵に向けて活発化、食欲旺盛になり、カニやエビを食べまくるのだとか。激しく運動して、おいしいものをたっぷり食べて、その脚は逆三角形に!まさに水泳選手のような、アスリートな体になる明石ダコ。つまり、最高においしいのです。

思い出します、あの肉感、塩気とうま味。これを書いている今も口が潤って仕方ないです。エンドレスで明石ダコの天ぷらを食べたい。ムチムチの明石ダコにまた会いたい!

※明石浦漁業協同組合へは一般の方は立ち入れませんが、明石駅近くの魚の棚商店街(うおんたな)や近隣のお店で明石浦漁協のお魚を購入したり食べられるので、ぜひチェックしてみてください。

連載:夢の食べ物
過去記事はこちら>>

文=高田サンコ イラスト=高田サンコ/講談社

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