PwCによるとオートメーション化の進行により、英国では2037年までに700万人分の仕事が消滅するという。一方でロボット化やマシンラーニング技術の活用で、今後の20年間で生産性は年率2%のペースで向上し、ほぼ同数の720万人の雇用が新たに創出されるという。
新たに創出される仕事の大半は、ロボットの製造やAIソフトのプログラミングに関わるものではない。「これらの仕事の比率は全雇用の5%程度にとどまる」とPwCのチーフエコノミストのJohn Hawksworthは述べている。
その代わり台頭するのが150万人分(全雇用の22%に相当)の、ヘルスケアやソーシャルワーク領域の新たな仕事だ。「高齢化が進むなかで、人間の作業が必要で自動化が難しい領域の業務需要が高まる」とHawksworthは述べた。
ただし、高齢化によって潤うのは英国政府が運営する国民保健サービスのNHSだという。「より多くの税金がNHSの運営に用いられることになり、雇用を増やす」とHawksworthは話す。
同様な分析結果は、2017年12月に発表された「Oxford Economics」のデータでも明らかになっている。Hawksworthによると、世間の人々やメディアはAIが仕事を奪うというアイデアに取り憑かれているが、生産性の向上がDGPを押し上げる効果を見落としているという。
テクノロジーの進化が既存の仕事を奪うのは、これが初めてではない。「かつての産業革命の時代の英国では、農夫たちは工場で働くために新しいスキルを身につけることを求められた」
AIの普及による労働形態の変化は、ここ数年で目に見える効果をもたらすとみられている。フランスのマクロン大統領は先日、180億ドル(約2兆円)の予算を用い失業者のための訓練プログラムを始動すると発表した。英国政府も2017年11月に、業界のリーダーらとともに労働者の再トレーニングプログラムを始動するとアナウンスした。
新たなトレンドが多くの労働者に影響を及ぼすなかで、このようなプログラムは非常に有用なものになり得る。PwCのコンサルタントですらAIの影響は無視できないものだ。
PwCはOECD諸国の労働データをまとめようとした際、人間の力だけでは難しいことに気づいたという。「分析にあたってはマシンラーニングのアルゴリズムを活用した。皮肉な話かもしれないが、これが現実なのだ」とHawksworthは話した。