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2018.07.18

米朝で「やるやる詐欺」、遺骨200柱返還の大嘘

Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images


一方、政権の中でトランプ氏だけが、正恩氏を信じ込んでいるとの見方もある。トランプ氏が「時間が足りなかった」と認めているように、首脳会談は「ろくな準備もされず」(米朝外交筋)行われた。それでも、両首脳は約38分間のtete-a-tete(記録者のいない1対1)会談をやり、「最初の瞬間からウマがあった」とトランプ氏は語った。

トランプ氏は一連の首脳会談で、米韓合同軍事演習の中止などを同盟国に相談せず独断で決めた。会談後の記者会見では、「(正恩氏は)頭が良く、とても優れた交渉者で、正しいことをしたいと思っている」と称賛。米国に戻ってからは「北朝鮮の核の脅威はもはやない」とツイートしている。

つまりトランプ氏は、都合の悪いことや聞きたくないことを一切受け付けない状態にある可能性がある。

では、北朝鮮は何を得つつあるのか。1つは厳しい経済制裁を緩和すべきだという一部の国際世論だろう。中国、ロシア、韓国は既に経済支援・協力する姿勢を鮮明にしている。正恩氏自身は中国の習近平国家主席、トランプ氏といった大国のトップと渡り合い、自らが乗り出した首脳外交への自信を深めたに違いない。

北朝鮮外務省報道官は7月7日に発表した談話で、朝鮮戦争の終結を最優先させた対米交渉戦略を鮮明にしている。それが政治的な宣言であろうとも、米国が朝鮮戦争の終結を認めれば、北東アジアにおける米国のプレゼンスの根拠は揺らぐことになる。

トランプ氏は、首脳会談から1カ月に当たる7月12日、ツイッター上で正恩氏からの親書(同6日付)を公開した。

「金委員長からのとてもすてきな手紙だ。大きな前進があった」と評価しているものの、親書に非核化への言及はなく、米側が朝鮮半島の平和構築に向けてきちんと行動すれば、「大統領に対する揺るがぬ信頼と信用がさらに強まる」と記されてあった。

連載:ニュースワイヤーの一本
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文=水本達也

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