ビジネス

2018.07.19

マンションの管理会社変更、「成功報酬型」に潜む落とし穴

Volodymyr Kyrylyuk / Shutterstock.com


ところが、大幅な削減ができるパターンというのはたいていの場合、売主系列の管理会社から、激安を売りとする管理会社への変更を伴う。しかし副作用の大きさを考えると、管理会社のリプレイスには相当慎重になったほうがいい。管理会社によっては、変更によって管理委託費が少なくなる代わりにマンション管理の質が低下することもあり、慎重を期したい。

そもそも管理会社を変えるといったリスクを冒さなくても、管理費削減は可能だ。ローコスト系の管理会社のビジネスモデルは、日常の管理は激安で受注しておき、のちに修繕工事受注で取り返すといった傾向が強く、後になって高額な工事見積を提示するといったケースも多い。

なくなっては困るサービスは何か

リプレイスを声高に吹聴するマンション管理コンサルタントの提案を冷静に分析・検証しよう。現行のマンション管理会社について、問題をあえて大きくし、混乱させることにより、本来必要のない管理会社変更を行うことで利益をあげようとしているのかもしれない。管理会社を変更するデメリットを説明しないで、リプレイスを行うことのメリットだけを強調する場合は特に要注意だ。

成功報酬型のコンサルティングは勢い、管理組合のためではなく、自分のコミッションにつながる「削減額の最大化」に向けた仕事をしがちで、それまで住民が享受してきた様々なメリットを見逃しがちになる。管理費の削減は、サービスレベルをキープするか、むしろ向上させながらコストを抑え、住民の満足・納得のいくものでなければ意味がない。

まずは、住民が管理会社に対してどのように考えているのか、アンケート等で広く意見を聴取してみよう。理事会としては、管理会社は変更せざるを得ないと思っていたとしても、住民の管理会社への評価は、往々にして異なる場合があるためだ。

そのうえで、まずは現行の管理会社と管理の中身やコストについて交渉の場を持つべきだろう。フロントマンに不満がある場合には管理会社に改善ないしは交替を求め、それでもなお改善されない場合に、管理会社の変更に取り組もう。

一般的にはどの程度の管理費が適正なのか、理事会として物差しを持っておきたいもの。「平成25年度マンション総合調査結果」(国土交通省)によれば、駐車場使用料等からの充当額を含む戸あたりの管理費の平均は1万5257円/月で、総戸数規模が大きくなるほど低くなる。形態別では、単棟型が1万5970円、団地型が1万3134円。もちろんこれらはあくまで目安であり、具体的にどのようなサービスが行われるかによって異なる。



こうしたプロセスを経たうえで、現在行われている管理の内訳やサービスの内訳を洗い出しリスト化、必要なサービスを委託契約に書き込んでいき、管理会社変更前と変更後で、具体的に何が変わるのか、理事会はもちろん、住民にもわかるようによく説明したうえで管理会社変更に踏み切ろう。

連載 : 日本の不動産最前線
過去記事はこちら>>

文=長島修

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事