リーダーとしてのトランプ大統領 強みと弱みを分析

トランプ大統領 (Photo by Chris McGrath/Getty Images)


3. 協働

トランプの選挙スローガン「米国第一」が全てを物語っているように、特に国際社会の舞台において、彼は良き協働者とは言えない。ドイツのメルケル首相やカナダのトルドー首相など、各国政府首脳との不和は広く報じられている。また彼は、中国と欧州連合(EU)との貿易に関税を課し、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が防衛費負担を逃れていると公式な場で批判し、気候変動に関するパリ協定や北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱を決定した。

また、大統領就任後は、側近の解任や辞任が相次いでおり、米政府は不安定な状態だ。マクロン仏大統領との間での友好ムードや、北朝鮮に核兵器開発計画を放棄させる取り組みを除き、トランプのコラボレーターとしての実績は乏しい。とはいえ、協働が大統領の優先事項の一つであるかどうかは不明だ。

4. オーナーシップ

トランプの問題は、オーナーシップ(仕事をする上での主体性)を持たないことではない。むしろ、他の誰にもオーナーシップを持たせないことだ。トランプはバラク・オバマ前大統領の大統領令を批判していたにもかかわらず、就任後の100日間で出した大統領令の数は第2次世界大戦後の歴代大統領で最多となった。

彼は、自分と意見が合わない側近とは距離を置く。例えばゲーリー・コーン前首席経済補佐官は、鉄鋼とアルミニウムに関税を課す計画を見直すよう大統領を説得することに失敗して辞任した。またトランプは、所属する共和党とも不安定な関係にある。部外者の立場から見ると、政権内でリーダーシップが分散されておらず、オーナーシップが共有されていないことが明らかだ。

5. ビジョン

トランプにビジョンがないと言うことはできない。彼のビジョンは「米国第一」だ。これは、米国人向けの雇用創出、貿易赤字の縮小、不法入国の取り締まり、そして欧州の軍事安全保障のための米国の防衛費使用を終わらせることだ。私たちは現在、トランプ大統領のビジョンをかなり明確に把握できている。そのため、トランプ大統領のビジョンを伝える能力はある程度、実証されていると言える。

しかし、彼がそのビジョンを達成するために用いる戦略の中には、明らかな欠点がいくつかあるとも言える。特に注目すべきは、すでに国内で意図せぬ影響を出しているとみられる貿易関税と、大きな非難を浴びて大統領の海外での評判を損なうことになった移民政策だ。

総合評価は?

それでは、ILMの「リーダーシップの5要素」に照らし合わせたトランプ大統領の総合評価は? 彼の最大の強みは偽りのなさだと言える。また、業績とビジョンの面でも、そのビジョンに異論を唱える人が多いことはさておき、かなり高く評価できる。一方、オーナーシップの面では、トランプ自身に偏り過ぎていることなどから、評価は低くなる。協働の面ではまるで見込みなしと言える。

編集=遠藤宗生

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