ピアースの目に留まったスワンクは、ドラマ降板から2カ月後にこの映画の主役に抜擢された。同作品は、制作費が200万ドル(約2億2000万円)以下の小規模な映画で、スワンクの日当は75ドル(約8400円)、累計でも3000ドル(約34万円)だった。
その小さな映画が、1999年のヒット作『ボーイズ・ドント・クライ』へと化け、スワンクはアカデミー賞を受賞した。
「もし私がドラマを降板させられていなかったら、その契約で縛られ、この映画への出演は叶わなかった。解雇されたことに感謝している。これが私の“一夜にしての成功”。9年間のつらい日々は、とても長い一夜だった」と彼女は語った。
一夜の成功の裏には必ず、長く終わりのない日々の積み重ねがある。スワンクは、「自分の夢へ向かって努力するには、日々選択することが大切だ」ということを心に刻んでいる。夢へ向かって努力するという選択には、それを継続するための独創性が必要だ。
一夜の成功を実現するに当たり最も大きな課題は、金銭と精神の両面で持続可能な道を切り開くことだ。何度も拒絶されることは、不屈の精神を養うための訓練であると同時に、拒絶され続ける期間を乗り切るだけの経済力も必要とされる。成功を得るには、人々からのメンタル面でのサポートと同時に、副業やパートタイムの仕事による(または周囲からの)経済的サポートも必要だ。こうした複雑な状態を打開するには、何年もかかる場合もある。
スワンクはこうアドバイスする。
「自分が周囲の先を行っていようが、遅れを取っていようが、気にする必要はない。スピードの問題ではない。ゴールへ至る道は無数にある。どの道を選択するにしろ、恐らくその道は長くて起伏だらけなのだから、喜びと生き甲斐を一番感じられる道を選ぶべき。そして、自分が出せる限りの根性と情熱、決意をもって、ゴールを目指すこと。そして何をしようとも、決してあきらめないこと」