そうめんの「薬味」は愛情そのもの

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ついそうめんを茹で過ぎて、お腹いっぱい食べたあと、気づくとウトウトと少し昼寝をしてしまいました。目が覚めた時には、「満腹中枢が満たされて睡魔に襲われたのかな」と思ったのですが、ふと娘を見てみると、元気に起きて本を読んでいました。

「???」

なぜ、彼女は眠っておらず、僕は眠ってしまったのか……。疑問に思い冷静に考えてみると、彼女はネギが嫌いで食べません。つまり、ネギに何か秘密があるのか? と調べたところ、ネギには硫化アリルという成分が含まれており、眠気を引き起こす作用があることがわかりました。

そこでふと、精進料理のことを思い出しました。日本が世界に誇る精進料理では、食べてはいけないものがあります。殺生をしたもの(動物性たんぱく質と脂肪)と、「五辛」と呼ばれるものです。

五辛とは、ニラ・ネギ・ニンニク・ラッキョウ・ハジカミのことで、「これらを食べると精がつくから修行の邪魔になるので食べてはいけない」のだと、以前、友人のお坊さんから聞いたことがありました。しかし、居眠り体験を機に、眠気も修行の邪魔になるな……と思い、そのお坊さんに聞くと、日頃から精進料理を食している彼でも、眠気を誘う作用は知りませんでした。

彼曰く、「言い伝えられ、継承してきたことだから守ってきた」とのこと。今となってはサイエンスでわかることですが、昔の人たちがよく観察し、気づき、実践して宗教に取り入れ、約束事ににしてきたのは凄いことだと思います。



夏休み子どもが昼寝してくれなくて困ってる人は、ネギをたっぷり刻み、そうめんと一緒にいっぱい食べてもらってください(笑)。

ただ、そうめんの問題は咀嚼(そしゃく)です。喉越しが良いので、ついついよく噛まずに飲み込んでしまいますが、噛まないことには素材の味を探すこともできず、唾液が出ず消化も悪く……せっかく健康的な素麺の魅力も半減してしまいます。

この夏そうめんを食すときには、出汁と薬味の関係を考え、できれば食卓で会話をし、よく噛んで食べみてはいかがではないでしょう?

ニース在住のシェフ松嶋啓介の「喰い改めよ!!」
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文=松嶋啓介

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