米シンクタンクのピュー研究所の調査によると、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアでバイクを保有する世帯の比率は80%以上。ベトナムの首都ハノイではバイクの数が世帯数の2.5倍近くに上る。これらの国々やアフリカの一部では、以前からバイクタクシーが発達してきた。そして現在、バイクのライドシェアの需要が高まっている。
2015年、ナッシュ・バレットはプログラマーのピーター・カリウキとともに、ルワンダを拠点とするバイクの配車サービス「SafeMotos」を創業した。スマートフォンのGPS機能を使ってユーザーと運転手をマッチングする仕組みはウーバーと似ているが、SafeMotosが最も重視しているのは安全性だ。
WHOのデータによると、アフリカを走っている車の数は、世界に存在する車の5%以下であるにもかかわらず、人口10万人当たりの交通事故死亡者数は世界一多い。その主な理由としては、運転手の交通ルールに対する意識の低さ、道路の状態の悪さなどが挙げられる。そこでSafeMotosはテレマティクス技術を導入し、登録運転手の走行距離、運転速度、急発進や急ブレーキなどの情報を常にモニターできる仕組みを構築した。危険と見なされた運転手はマッチングの対象外となる。
現在、Safemotosには約400人の運転手が登録し、そのうちの約150人が稼働する。女性運転手は今は3人しかいないが、30人が研修を受けている最中だ。アプリには、女性ユーザーが女性運転手をリクエストできる機能がある。
Safemotosは年内に隣国であるコンゴ民主共和国の首都キンシャサにも進出する予定だ。バレットはバイクのライドシェアがアフリカの発展に寄与すると信じている。「開発途上国の都市計画というと、バスや地下鉄を思い浮かべる人が多いが、移動手段としてはバイクタクシーの方が効率的だ」とバレットは語る。
米国ではバイク版エアビーアンドビーも
Safemotos以外にも、バイクの配車サービスは世界各地で拡大している。東南アジアで展開する「グラブ(Grab)」は四輪車とバイクの両方を扱っているが、今年3月の「Uber MOTO」(ウーバーがアジアで立ち上げたバイク配車サービス)買収を機に、今後ますます勢力を広げることが予想される。その他、インドネシアの「Go-Jek」、ウガンダの「SafeBoda」、トルコの「Scotty」なども利用者の支持を集めている。
一方、車の所有率が高く、他人同士がバイクに相乗りする文化がない米国では、ライドシェアよりもレンタルサービスに需要があるようだ。
昨年10月、テキサス州で創業したTwisted Roadは、バイクのエアビーアンドビーとも言うべきサービスを提供する。借主の多くは旅行者で、貸し出す側はガレージに眠っているバイクを借主が取りに来てくれるのを待つだけでいい。現在、700台以上のバイクが登録されており、CEOのオースティン・ロスバードは、これまでの取引件数やユーザー数は明かさないものの、「(利用状況は)非常に活発だ」と話している。