ビジネス

2018.07.17

デキる組織の人事は、「設計」よりも「運用」がうまい

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コップに水が半分入っているとき際に、「半分も入っている」と言うか「半分しか入っていない」と言うか。事実は「半分入っている」だけなのに、言い方によって聞く側の印象は変わる。

人事評価面談の際に、似たようなことが起きていないだろうか。本人は「これだけやりましたよ」と主張するものの、マネジャーは「これだけしかやっていないでしょ」とフィードバックする。何が期待値なのかを事前に合意していないと平行線をたどってしまうことになるのだ。

さらに、その面談の場で随分以前の行動に対して改善点の指摘をしたとしても、「今更言われても……」となりかねない。評価面談だけがフィードバックの場というわけではないのだ。

そう考えると、人事評価の制度が導入されたり、整備されたり、ということだけで組織運営がうまくいく、とは考えにくい。現実には上司部下の信頼関係、その中で合意する期待目標、期中の支援や指導、フィードバックのタイミングやフィードバック内容が、組織の活力を支えている。最終的につける評価が同じだとしても、納得感がないと反発を引き起こし、本人の力も、組織の生産性も下げてしまう可能性がある。

こうしたズレが起こらないような動きをとること、あるいは、システムやルールが機能している状態を「運用」と称す。「運用」は「ものをうまく働かせ使うこと」というような意味を持つが、人事制度の運用は「組織(個々)の物理的に見えない『状態』 をきちんと把握し対応(事前対処、事後処理)できていること」と言えよう。

たとえば「残業申請は毎日事前承認で行うこと」というルールをつくったとして、それで終わりではない。実際のところ、月末にまとめて提出している事象が横行したままの場合が多い。なぜこのルールにしたのか、マネジャー層の責務として何が必要なのか、理解してもらう働きかけをしつこく行わないとマネジャーの意識はおそらく変わらないだろう。こうした働きかけも一つの「運用」である。

また、「外出続きだから、随時承認なんてムリだよ」という実態があれば、それを踏まえた仕組みの工夫が必要になる。外出先で簡易に承認できる仕組みを導入することはそう難しくない。現場実態を知ったうえで、実現性を高めていくのも「運用」の一つである。
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文=堀尾司

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