サイバーエージェントの方に、同社がリクルートとの合弁で開発したGeppoの運用について教えてもらったことがある。従業員のコンディション変化を発見するツールで、従業員は月に1度、3つの問いに答えるだけでよい。しかし簡単なことでも、忙しさ等を理由に未回答者が出てしまうのが常だ。
しかし、同社の人事担当者は100%の実施をしないと意味がないと考え、徹底した動きをとった。未回答者へタイミングを見計らったメール、答えないとまずいと思わせるようなタイトル、最後にはその人の席にまで赴き「協力してくださいよ!」と肩をたたく。導入初期に徹底した運用をしたからこそ、全社員に定着し、継続したという。
イビチャ・オシム監督がサッカー日本代表を率いていたときに、縦横無尽に献身的に動く人を「水を運ぶ」と表現したと言う。成果を出すために必要なのは、注目されるスター選手だけではない。攻めと守りの間に入り、周囲の選手をサポートするために動き回る。その役割が実はとても重要だというのがオシム監督の考察だ。
人事も実は、同じことが言えるのではないだろうか。会社という組織が力を発揮するために、最大限のサポートをし続けるのが人事だ。
我々の実施しているアカデミー「CANTERA」では、その姿を「水を運ぶ人事」と称してきた。社員が水を飲む人ならば、人事は水を運ぶ人という事だ。制度により良い組織作りを行うには、役割を理解し全うしなければならない。どういう制度であれ、運用力の優劣が結果を左右する。その運用力の一つが、人事がどれだけ水を運べるか、なのだ。
連載 : 人事2.0 ──HRが作る会社のデザイン
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