「世界で最も偉大なリーダー」が実践する、性格重視の組織戦略

セオ・エプスタイン(左下)、ダルビッシュ有(右)

2017年、フォーチュン誌の「世界で最も偉大なリーダー」で1位に輝いた現シカゴ・カブスGMのセオ・エプスタイン。レッドソックス、カブスで優勝に導いた彼の「性格重視」の組織戦略とは。


メジャーリーグ史上、もっとも人気が高いGMと呼ばれ、球場を出るときにゴリラの着ぐるみをまとって人だかりから脱出するほどの男が、1973年生まれのセオ・エプスタインである。
 
2002年、28歳でボストン・レッドソックスのGMに就任した彼は、イェール大学出身で弁護士資格をもち、「イケメン」として、話題になった。
 
レッドソックスに一年間在籍した斎藤隆は、エプスタインによる「チームの調和力」を特徴として挙げている。ドラフトとFAなどで戦力補強を行うのはどの球団も同じだが、過去の実績だけで選手を選ぶのではなく、長期的視点でどういう選手を集めたらチームにプラスになるかを考えている。その軸の一つが、人格を重視したチームづくりだ。
 
例えば、11年に「ダメ球団」の烙印を押されていたシカゴ・カブスの球団副社長に就任したエプスタインは、FAで人格者として知られるジェイソン・ヘイワードとベン・ゾブリストを獲得した。ヘイワードにはこんなエピソードがある。
 
16年、クリーブランド・インディアンズとのワールドシリーズの最終戦で、カブスの守護神チャップマンが打ちこまれて同点となった。敵地ということもあり、カブスは劣勢となり、ムードも沈んでいく。さらに雨が降りだした。延長10回に雨天により試合が17分間中断。このとき、クラブハウスで突然、ヘイワードがスピーチを行った。

「この時点までに起きたことを、我々はもう忘れる。終わったんだ。我々はまだ最高のチームだし、最高であることをこれから引き出すんだよ。勝ちにいこうじゃないか」
 
このスピーチが選手たちの心を刺した。興奮した選手たちは、まさに一致団結した「ファミリー」となり、再びフィールドに向かった。奇跡が起きたように、試合の流れは一気に変わり、逆転。見事に108年ぶりのチャンピオンに輝いたのだ。
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文=藤吉雅春

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