「世界で最も偉大なリーダー」が実践する、性格重視の組織戦略

セオ・エプスタイン(左下)、ダルビッシュ有(右)


エプスタインの見る目の確かさも際立っている。10年までカブスがドラフト1位で指名した選手のうち、メジャーリーグで活躍できたのは、1995年のケリー・ウッドと2001年のマーク・プライアーの二人だけだった。

しかし、11年にエプスタインが球団副社長に就任して以来、ドラフト1位で指名した選手は、次々と一線で活躍。11年のハビア・バイエスから15年のイアン・ハップまで、5年間にドラフト1位指名した全選手が、現在のカブスの主力選手に成長している。

一方、エプスタインのトレードも大胆だ。07年、球界を代表するスターで、レッドソックスの顔だったノマー・ガルシアパーラを「守備力の強化」を理由に、シーズン中に放出。ファンは怒ったが、放出後、チームの勝率は7割となり、優勝したのだ。
 
また、チームの和を乱す選手に対して容赦なく制裁を下す。レッドソックス時代、以前からその素性に問題があったマニー・ラミレスをドジャースにトレード。また、ボビー・バレンタイン監督(元千葉ロッテマリーンズ監督)の采配を巡って監督と衝突した4人を放出した。昨年には、チームメイトを批判した選手を、即座にブルージェイズにトレードに出している。
 
こうして球団が必要としている選手を緻密に分析し、調和のとれたファミリーを計画的に築くのが特徴である。
 
16年、上原浩治投手を獲得する際、エプスタインは球団オーナーからのビデオレターを上原に送った。これが見事に上原の心を掴んだ。上原はカブスより好条件を提示した他球団のオファーを断り、カブスと契約した。また、18年にエプスタインはダルビッシュと通訳なしで面会。これがダルビッシュに好印象を与え、契約に至ったという。

文=藤吉雅春

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