ビジネス

2018.07.18 10:00

サービス業界の生産性向上、働き方改革に取り組む起業家の熱意

GMO VenturePartners取締役パートナー 宮坂友大とナレッジ・マーチャントワークス代表取締役社長 染谷剛史

GMO VenturePartners取締役パートナー 宮坂友大とナレッジ・マーチャントワークス代表取締役社長 染谷剛史

染谷剛史が2017年3月に設立したナレッジ・マーチャントワークスは、外食、小売りをはじめとする多店舗展開サービス産業に向けた店長・従業員・アルバイト向けの働き方・生産性改革プラットフォーム「はたLuck」やHRコンサルティングを提供。人とテクノロジーで店舗サービスの変革を目指している。

宮坂友大が取締役パートナーを務めるGMO VenturePartnersは、ナレッジ・マーチャントワークスへの今後の投資を決定しており、支援をはじめる。


宮坂:染谷さんと最初にお会いしたのは2017年1月。ある経済界の重鎮の方が主催する新年会でした。知り合いの方から招待され、気軽な気持ちで行ったら、普段接することがない様々な分野の著名な方々が集う場で、驚きました。

染谷:当時はまだ前職のリンクアンドモチベーションの執行役員を退職することを決めた時期。レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんに起業するかどうかの相談に行ったところ、「自己紹介3分するだけでいいから」と誘われたのがその食事会でした。同年代が宮坂さんだけだったので戦友のような感じでした。だから、その後も2、3カ月に一度くらいのタイミングでお会いしていたのですが、投資家と起業家という感じではなく、包み隠さず宮坂さんに事業の報告をしていた(笑)。

宮坂:僕らの投資基準は、市場、ビジネスモデル、経営チームの3つを掛け算して判断しています。染谷さんはそれらを網羅し、かつ、マチュアなビジネスマネジメントができる起業家。自分自身には厳しく、周りの人に対しては優しさを持って伴走してもらうような流れをつくり出せる。

僕は染谷さんの創業時からのありのままの過程をお聞きできたので、サービス産業への強い思いや、深い理解度がわかり、逆に良かったです。お店のことをうれしそうに語る言葉や表情を見て、本当に業界を変革し、よくしようという熱意と深い洞察があると感じました。

染谷:宮坂さんにサービス業に関するアメリカの最先端事例を見せていただいたことは転機になりました。世界で起きているITでの生産性改革の実態を見られたことで、店舗内の社員データ、店舗と本部間のデータなど「組織内のデータを一元化し、生産性・働き方改革ができないか」という発想に変わりました。そのための第一歩として、AIを活用して、店長のタスク、マネジメントをアシストするソリューションへとガラッとサービスを変えました。

宮坂:我々がこれまで培ったインターネットビジネスでの知見、成長企業が経験してきたノウハウ、グローバル環境での情報を提供することで、より良くなると思っていました。我々のアプローチは、足りないところを補い、強いところをさらに強くするというもの。事業も組織もともに創るスタンスです。今後に期待することは、「やること」は見えていらっしゃると思うので、それを「いかに速く実行するか」に期待しています。

染谷:例えば、飲食店のホールで働く人は履歴書に“ホールスタッフ”としか書けないんです。そうすると、一律時給1,000円と決まってしまう。そこに人間性の評価は反映されない。我々のアプリはスタッフの個人IDに教育に基づくスキル段階やお客様や同僚からの評価といったデータが紐づき、その人自身の人間性を評価する。僕らが目指している世界は、働く一人ひとりに「仕事の誇りや喜び」を与え、それがサービスの質の向上につながり、もっと豊かな社会をつくること。その世界を実現できればと思っています。


みやさか・ともひろ◎GMO VenturePartners取締役パートナー。慶應義塾大学経済学部卒業後、SBIホールディングスを経て、2006年に現住信SBIネット銀行の立ち上げに参画、08年より現職。主な投資先は、アペルザ、ユーザベース、ラクスル、ChatWork、メルカリ、マネーフォワード、C Channelなど多数。

そめや・たけし◎ナレッジ・マーチャントワークス代表取締役社長。リクルートグループ、デジットブレーンを経て、2003年リンクアンドモチベーションに入社。12年には同社執行役員に就任し、サービス業に特化した組織人事コンサルティングカンパニー長を担う。17年、ナレッジ・マーチャントワークスを設立し、現職。

文=山本智之 写真=平岩享

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事