個人の金融資産が17年で5倍になるアメリカ
この表は、1990年と2017年の日米の個人金融資産の推移を比較したものである。
(注)1990年は1米ドル=135.75円、2017年は1米ドル=112.61円で計算。(出所)日本銀行「資金循環統計」、BOARD OF GOVERNORS of the FEDERAL RESERVE SYSTEM Financial Accounts of the United States、IMF - World Economic Outlook Databases (2018年4月版)を基に株式会社マネネ作成
1990年、日本と米国の個人金融資産の差は1.96倍の開きであった。これだけを見れば日米の差が大きく見えるが、人口に目を向ければ、当時の日米の人口比率は2.03倍であり、1人あたりの金融資産でみればほとんど差はない。
しかし、2017年時点では金融資産の差は大きく開き、米国の個人金融資産は日本のそれの5.01倍まで増加したのである。この間、人口でも多少は差が拡大したものの、金融資産の増加を全て説明できるものではない。
当然、国の違いがあるので、この金融資産の伸びを1つの理由で説明しきれないが、大きな理由としては、家計が抱える金融資産の内訳が挙げられるだろう。
現金・預金が50%を占める日本、株式等が35%を超えるアメリカ
(注)「その他計」は、金融資産合計から、「現金・預金」「債務証券」「投資信託」「株式等」「保険・年金・定型保証」を控除した残差。(出所)日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」を基に株式会社マネネ作成。2017年3月末時点
上図を見れば明らかであるが、日本の家計が保有する金融資産は半分以上が現金・預金となっており、株式等が占める割合はわずか10%である。一方で、米国は現金・預金の比率が13.4%で、株式等が占める割合は35.8%となっている。参考までにユーロ圏も載せているが、ちょうど日本と米国の間といったところであろうか。
ほぼゼロ金利状態の日本において資産の半分以上を現金のまま、または預金として保有していた日本と、資産の半分以上を株式や投資信託などのリスク資産に振り分けていた米国との差が上図のような結果を生じさせたのであろう。
しかし、これだけをもって、日本の金融リテラシーが低いとは言えない。むしろ、これまでの行動は合理的だったとも言える。
(出所)総務省「消費者物価指数」、日本銀行「金融市況」を基に株式会社マネネ作成
日本では20年近くデフレ状態にあり、このような状況下ではインフレによって預金が目減りすることもなく、株などのリスク資産を保有することによるダウンサイドリスクを考慮すれば、現金・預金として保有することは必ずしも間違った投資行動ではないと言える。しかし、これからもこの状態が続くとは限らない。
筆者はデフレ脱却については、そう簡単に実現できるとは思っておらず、総務省から発表された直近の消費者物価指数の結果を見ても、依然としてデフレ脱却への道のりは長いと感じる。しかし、内閣府が発表している「中長期の経済財政に関する試算」によれば、このままの経済成長であっても前年比1%以上、成長実現シナリオにおいては同2%程度のインフレになると試算している。
仮にそのような状況になっていけば、今後は日本においても資産運用や投資の必要性が出てくるだろう。日本において、資産運用や投資は危険、詐欺かもしれないなど、不必要に悪い印象を持つ方も多いが、しっかりと金融の知識を身につければ、日本でも海外同様に資産運用を積極的に行うことが実証されている。
【連載】0歳からの「お金の話」
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