ビジネス

2018.07.12

「未来が描けない」 AIをめぐる対極の議論|出井伸之

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏


突きつけられている、未来

日本はどうしたいのか。アメリカをフォローするばかりではなく、国としての考えを持って進めなければいけない。何か起きてから諸外国の反応を見て対応するのでは、初動も遅くどっちつかずになってしまう。

今年2018年に生まれた人は、予測によると27歳でAIが人間の知能を越すシンギュラリティを迎えてしまう。いや、もっと早く訪れるとも言われている。「知能」とは何かという根本から、私たちは真剣に考えなければいけない。

さらに言えば、AIやブロックチェーンなどの技術が進歩すると、ビジネスそのものが変わらざるを得ない。ビジネスシンギュラリティは、2045年よりもっと早く来る。この数年で、世界中のビジネスの在り方が大きく変わる。その兆しはもう見え始めている。

定説では、オフラインのプロダクト企業とオンラインのデータ情報企業と分かれていたものが、融合すると言われている。実際、米国ではアマゾンがオフラインの世界に進出しリアル店舗ビジネスを始めたり、中国ではオフラインとオンラインが相互に連携し境目をなくすというOMO(online merge offline)がビジネス界での流行り言葉になりつつある。

世界中で新しい産業を生み出すためにビジネスモデルが変革されているのに対し、日本はまだまだ遅れているのが現実だ。ヨーロッパとしての行動、中国としての発言がある中で、日本はどういう立場で世界に臨むのか。「この現状はいつかどうにかなる」と、他国任せで目をそらしているのではないか。日本としての問題意識を持ち、これからを考えていかなければいけないと思う。

未来に向けた大きなうねり

今、この瞬間も技術は進歩している。シンギュラリティがくる時に新しいビジネスモデルはいきなり生まれない。徐々に進化して特異点に達する。だからこそ、現実的に進めることが大切だ。

次の技術のパラダイム変化に備えた明確な法規制やルールをつくる。そのルールを元にイノベーションが生まれる。そしてイノベーションの理想形は産官学が連携することだ。こうした大きなうねりが各国で起き始めている。

その結果の未来が、ユートピアでもディストピアでも、いずれでもなかったとしても、この先、私たちの生活は想像以上に大きく変化する。そのことに、変わりはない。だから、子どもたちが大人になる時の世界のために、いま考え未来を設計していかなければならないと思う。

The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜
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インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 撮影=藤井さおり 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA

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