フォーブスは今年3月初めまでに、トランプの保有資産はおよそ31億ドル(約3420億円)とする調査結果をまとめたが、その大半は、ゴルフ場や建物など保有する有形資産の評価額だ。
トランプが債務の返済や新たな機会への投資を行うためには、現金が必要だ。米紙ワシントン・ポストによれば、トランプは2006~14年、新たな物件の購入に4億ドル以上を投じていた。任期中は、それほどの金額を生み出すことは難しいだろう。
トランプは5月、ニューヨーク・ブルックリンの集合住宅の売却に伴い推定1500万ドル(税引後)を受け取ったことが分かっている。ただし、フォーブスの調査によれば今年上期には、それ以外ではコンドミニアムと土地の売却でおよそ850万ドルを得ただけだ。
トランプが今年に入って販売した不動産のほとんどは、カジノ王フィル・ラフィンと50%ずつを保有するラスベガスのコンドミニアムだ。多くは持ち株会社を通じて購入されており、所有者は公開されていない。また、登記記録によればトランプは、ロサンゼルスにあるゴルフコース周辺の土地3区画を560万ドルで売却している。
大統領に選出される以前、トランプはコンドミニアムや土地の販売で年間5000万ドル以上を売り上げていたとみられる。就任後も2017年上期には、これらの事業から2000万ドル以上を得ていた。
立候補で手放した「稼ぐ機会」
そのほかトランプは、大統領選への出馬を前にリアリティ番組「アプレンティス」の司会を降板したが、それは連邦通信委員会が大統領選の候補者について、テレビ番組に出演する際(ニュース番組を除く)の放送時間は等しくなければならないと定めているためだ。トランプが自身の番組で司会を続ければ、その規則を守ることは不可能だと考えられる。
トランプは選挙活動中に発表した文書の中で、2004~15年までに同番組への出演によって得た収入は約2億1400万ドルだと豪語していた。だが、同じ書面で主張していた「保有資産100億ドル以上」は、事実ではないことが分かっている。
さらに、大言壮語の政治もトランプのキャッシュフローの助けにはなっていない。大統領選に向けた選挙運動を開始した後、それまで提携していた複数の企業が、トランプとの関係を解消し始めたと伝えられている。