・ 米疾病対策センター(CDC)によると、米国などの高所得国では自殺と精神疾患(特にうつ病とアルコール使用障害)との関連性が確認されている。
だが、どの国でも自殺は増加しており、「多くはお金の問題や人間関係の破綻、慢性の痛みといった生活上のストレスへの対応力が失われた“一瞬の危機”に際して衝動的に実行に移されている」という。
・ 世界全体でみると、自殺は15~29歳の死因の第2位となっている。また、高所得国では若者の自殺が記録的な水準で増加している。ある調査結果によると、英国の大学生の自殺は2007~16年の間に56%増加したという。ただし、同じ期間に大学生の数が変化していることもあり、自殺が実際にどれだけ増えたのかを正確に知ることは難しい。
・世界全体の自殺の78%が低中所得国で起きていることも、憂慮すべきことだ。これらの国では農村地域を中心に、自殺の方法として服毒が多くなっている。自殺者の約30%が、農薬を飲むことで命を絶ったと推計されている。
・ 高所得国の日本は、人口が米国(約2億7500万人)の半数(約1億2600万人)ほどであるにもかかわらず、年間の自殺者数は米国とほぼ同数となっている。
・ 2017年、米国のビベック・マーシー医務総監(当時)は命にかかわる病である孤独がまん延していると断言。「社会的孤立は寿命を縮める危険要素であり、1日当たり15本の喫煙や慢性病と同程度の悪影響がある」との研究結果を紹介した。
・英国では今年、世界初となる「孤独担当相」が任命された。孤独の問題に対応する「ジョー・コックス委員会」が昨年発表した調査結果は政権に大きな衝撃を与え、それがきっかけとなった。
調査で明らかになったのは、英国内だけでも900万人以上(人口の約14%)が「常にまたは頻繁に孤独を感じている」ことだ。また、その影響によって英国の雇用主には、年最大35億ドル(約3870億円)の損失が生じているという。
自殺との関連が指摘される心身の健康問題を改善させるための努力は、全てが重要なものだ。だが、明らかに世界のどの国でも、そうした取り組みが不足している。自殺は豊かであるか貧しいかの問題ではなく、文化的現象でもない。世界の全ての社会・地域にまん延しており、そして自殺を巡る状況は悪化し続けている。自殺は個人の行動だという考えは捨て、全人類の健康の問題だと捉えるべき時に来ている。