世界で最も長いグリーンが楽しめる「ザ・ヨーロピアン・クラブ」

ザ・ヨーロピアン・クラブ


我々はアイルランドツアーを反時計回りに実施していたので、ここヨーロピアン・クラブに到着したのはツアー最終局面であった。到着すると、珍しくひどい雨が降っていた。クラブハウスで待機していると、メンバーとおぼしき方が「もう少し雨は続きそうだが、じきにやむぞ」とおっしゃった。また、ここをプレーせずに去るのはありえないという思いで、ティーグラウンドに向かった。

最初の1番から手強いホールの連続で、雨とあわせて手こずった。しかし後半にはすっかり雨も上がり、短いながらもタフだと噂のパー 3の12番ホールに到着した。2パットで上がれれば上等だと聞いていたが、無事にワンオンに成功するも、グリーンがタフでやはり3パットしてしまったのはご愛嬌だろう。ちなみにパット・ルディが一番好きなのがこの12番ホールで、夜まででもずっと居たい場所であるそうだ。


設計者のパット・ルディ自身が最も好んでいる12番ホール。非常に海と近く、ショットがビーチへ届く可能性さえある。

このザ・ヨーロピアン・クラブは20ホールある変則コースでも有名だ。特に珍しいことに、そのうち19ホールからは海が見え、距離も非常に近い。ヘリコプターまで使って場所を探したパット・ルディの執念を実感できる。

数多くある深いバンカーに出入りするところに、鉄道の線路の古い枕木(ちなみに英語では「sleeper」というからこれはこれで面白い)が使われているのも、英国のリンクスの伝統を継承している。古いリンクスをこよなく愛したゴルフ評論家のバーナード・ダーウィンが生きていれば、きっとこのゴルフ場を大好きになったに違いない。

ロザペナ・ゴルフ・クラブやバリーリフィン・ゴルフ・クラブなど、アイルランド屈指のリンクスを設計してきたパット・ルディが、最後に集大成として自分のゴルフ場を完成させたザ・ヨーロピアン・クラブ。終わってみると本当に素晴らしいコースであったなとおきまりのビールを飲んでいたら、先ほど「雨でも回ってこい」と背中を押してくれたメンバーらしき方が、なんとパット・ルディご本人だった。当時まだインターネットもあまり普及していないころとはいえ、我々の不明を恥じるばかりであった。

天気まで詳細に理解する、深い愛に包まれた新名門コースに乾杯!


こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

文=小泉泰郎

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