ビジネス

2018.07.10

トイレで会議も当たり前? 「Oculus Go」が変える私たちの働き方


「空間」に縛られずに作業できる

──VRによってビジネスはどう変わっていくのでしょうか。

先ほども言ったように「移動」がなくなるのは大きな変化ですね。これはさらに抽象的な言い方をすれば、「空間」の捉え方が変わるということ。「ペーパーパラダイム」から「空間パラダイム」への変化です。

いま私たちが暮らしているのは、空間の量に制限のあるペーパーパラダイムの世界です。私たちは机の上にものや紙を置いて作業をしています。しかし、重力があるため作業スペースが限られていました。

パソコンやスマートフォンによって、ディスプレイの中での作業を可能になった。文面の修正やメールの送受信といった作業を、ウィンドウを切り替えて行うことができます。

とはいえ、これは空間の観点では大きな変化ではありません。「水平な机の上で紙を入れ替えながらこなした作業」を「画面の中でディスプレイを入れ替えながらこなす作業」に置き換えただけですから。

──PC上での作業も、スペースに制約があるという意味では変わらないと。

ところが、VRは視界全てを映像世界に置き換えます。そこには机と違って重さも体積も存在しません。だから物理的なスペースを気にせず、無限に紙を広げることができます。

PC上でたくさんの情報を一度に見たかったら、株のトレーダーのように複数のディスプレイを机に並べる必要がありました。つまり、ディスプレイという四角い枠に区切られたスペースを、机という限られたスペースに並べるしかなかった。

しかし、VRであればどこにどんなものをどんな形で置いても問題ない。紙や机に作業場を制約された「ペーパーパラダイム」から空間全体で自由に作業できる「空間パラダイム」に移行するということです。


(出典元:デコGo写真集『ミライ予想図』)

──たしかにそう聞くと、仕事全体がものすごく変化しそうな気がします。

これを上手く使えば、自分だけの集中スペースを用意することもできます。例えば締め切り前には机と観葉植物が広がり、雑音のないVR空間に移動する。カフェやコワーキングスペースに移動することなく、一瞬で自分だけのスペースに入ることができます。これだけでも時間の使い方はかなり変わると思いませんか?

また、こちらはすでに実現していますが、Roomsではスライドを同じVR空間の聴衆の前に広げて発表できます。さらにこれからは、現地に行かなくてもVR上で物件を下見することができるようになるはず。これまではスライドや間取りを紙面上で「プレビュー」することしかできませんでしたが、これからは「プレ体験」できるようになります。

──なるほど。まだまだVRにはさまざまな可能性が眠っていそうですね。

言葉だけで語るとどうしても抽象的で、絵空事に聞こえるかもしれません。ですが、こうしたニュアンスは一度VRを体験してみれば実感が湧くはず。新しい技術の可能性を手っ取り早く知るには、とにかく触れてみることが大切。

テレビが登場し始めた頃、そのすごさはおそらくラジオでは伝えられなかったはず。いまのところはVRでなければできないことは少ないですが、これだけメリットがあるのだからVRが普及するのは確実です。

VRはすぐに、物珍しいものではなくなるでしょう。「空間」を渡り歩くのが当たり前の時代は、そう遠くないうちに訪れると思っています。

文=野口直希 写真=小田駿一

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