ビジネス

2018.07.08

米中摩擦でシリコンバレーから消える「中国マネー」の行方

Dilok Klaisataporn / shutterstock.com


アリババ、テンセントも投資縮小

アリババの金融子会社「アント・フィナンシャル」は米送金サービスの「マネーグラム(Moneygram)」を12億ドルで買収する予定だったが、安全保障上の観点からCFIUSが承認せず、アントは今年1月に計画を断念した。アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)は1年前にトランプ大統領と面会し、今後5年で米国で100万人の雇用を創出すると約束していただけに、買収断念を残念に思っていることだろう。

調査会社「CB Insights」によると、昨年のアリババによる米ハイテク企業への投資件数は3件と、過去5年間で最低だったという。

テンセントの状況も似ている。Dealogicによると、同社は今年に入ってから米国ハイテク企業3社に出資し、投資金額は1億500万ドルだという。最近ではバイオテック企業「XtalPi」に1500万ドルを出資しているが、過去の投資実績とは比較にならないほど規模が小さい。同社はこれまでテスラに18億ドルを出資して5%の株式を取得し、2017年にはスナップチャットに20億ドルを出資して12%の株式を取得している。

「大企業への大型投資のほうが、アーリーステージのテック企業に出資をするよりも厳しく精査されるだろう」とニューヨークに本拠を置くコンサルタント会社「Eurasia Group」のPaul Trioloは話す。アリババとテンセントにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

小規模スタートアップには希望も

Trioloによると米中関係は悪化の一途をたどっており、2019年か米中間選挙後にならないと対話ムードは高まらず、当面は投資環境が回復する見込みは薄いという。

しかし、CFIUSは中国企業による米企業の買収を全て却下しているわけではない。6月には「China Oceanwide Group」が米保険会社「Genworth Financial」を27億ドルで買収している。Genworth FinancialはCFIUSの承認を得るため、米国内の保険加入者のデータを米国ベースの外部プラットフォームを使って管理すると説明している。

UpHonest CapitalのGuoも、中国の投資家が米国企業に出資をする機会はまだ十分残されていると考えている。Guoによると、コンシューマ事業を手掛ける米スタートアップの多くは、世界で最も人口の多い中国市場への参入を目指し、中国系投資家からの投資を希望しているという。

「エンジェルラウンドからシリーズAまでのアーリーステージ投資に関しては、まだそれほど大きな影響が出ていない。中国の投資家は、シリコンバレーでの投資機会を引き続き探している」とGuoは話す。

編集=上田裕資

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