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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

visvimデザイナー 中村ヒロキ

ファストファッションが社会に広く浸透し、ファッション業界を中心に市場は大きな変革を迫られている。その変革の一部として、率先して新たな戦略を取るブランドもあれば、マーケットをあえて意識せず独自路線を貫くブランドもある。visvimは、確実に後者だ。2000年にスタートして以来、さまざまなアーカイブへの造詣をベースに、既存のカテゴリの枠を超えて確固たるポジションを築いてきた。それはまさしく「パーソナル・ラグジュアリー」の理想形と言える。

グローバル市場において、生産の現場は常に様々な問題を抱えている。世界中のマニュファクチャーはファストファッションの台頭により弱体化し、その貴重な技術や文化が失われようとしている。visvimデザイナー・中村ヒロキは、そんな課題の解決までを含むデザインを行う。一つのブランドが、達成する小さくも大きな偉業に、ローランド・ベルガーの福田稔が迫る。(前編はこちら


──visvimはブランドが始まって18年経ちます。中村さんが生み出すものに対して世界中でファンが増えている今、何かやりたいことはありますか。

もちろんたくさんありますよ。これまでは「こんなのできないよ」と言われることもあって、一つの製品を作るためにアルチザンや工場を探すのも大変だったけど、今は世界中のマニュファクチャーと関係ができてきて「一緒にものづくりしませんか?」という話をいただくこともあります。また、様々なマニュファクチャーを支えたいという思いもありますね。

日本国内では跡取り問題などがあって、続けることが困難な職人や工場が数多くあります。海外に拠点をうつすブランドも多いのですが、僕たちは日本の製造業と一緒に、産地を盛り上げることが使命だとも感じています。もちろん、そのためにはマーケットに受け入れられるものを作らなくちゃいけないですね。

──産地が疲弊し縮小しているのは、日本の産業構造的な問題です。実際、イタリアやフランスと比較すると、生地の輸出額では遜色ないのに、最終製品輸出額は極端に低い。グローバルで売れる日本のブランドが少ないということですね。(下グラフ参照)

そうなんですよね。日本は感覚的な部分を世界へ輸出できていない。アパレル産業でそういうブランドを増やすことがポイントだなと感じています。



本能に訴えるものづくりを

──例えば私が着ているこのジャケットは、日本のブランドのナイロン生地を使用しているのですが、ルイヴィトンがこの生地を使うと40万で売れる。これが日本のセレクトショップだと、4万円になって、縫製をアジアの工場で行うんですよね。visvimはラグジュアリーブランドに近い価格帯ですが、国内でそういったブランドが増えていく可能性はあると思いますか。


ローランド・ベルガー 福田稔

これから出てくると思います。大きな絵を見られるようになる、ということが大事ですよね。ひとつのマーケットとか、業界やカルチャーの常識を超えていく作業が必要かもしれません。日本の生地屋さんは素晴らしいものを作るので、感性的な価値がそこに加わるとさらにいいと思います。

僕はイタリアのリモンタと一緒に仕事をしているのですが、彼らは感性を込めた物作りをしていまするんです。技術だけに頼りすぎず、感覚とのバランスが素晴らしい。パタンナーのセンスがすごくいいんですよ。

──リモンタは、経営陣を含めてそういった傾向があるのでしょうか?

そうですね。日本は、科学や化学やテクノロジーに頼りすぎているんです。それは、技術さえ移植すればどこでも誰でも模倣できてしまう。

イタリアの人たちは、テクノロジーを効率化のためだけに使うのではなく、表現の幅を広げるために使っている。例えば毛筆でしか描けない線があるように、テクノロジーでしか描けない表現とは何か、ということを考えるんですね。この姿勢には学ぶところがあると思います。

聞き手=福田稔 文=長嶋太陽 写真=小林真梨子

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