visvimは、確実に後者だ。2000年にスタートして以来、世界中に散らばるさまざまなアーカイブへの造詣をベースに、既存のカテゴリーの枠を超えて確固たるポジションを築いてきた。それはまさしく「パーソナル・ラグジュアリー」の理想形と言える。
ブランディングにメスを入れて、それを方法論にまで分解した言説は世間に流布しているが、それは画一化したフォーマットを生んでいるとも言えるだろう。visvimというブランドは、それらから意図的に距離を置いている。その根幹に貫かれる、デザイナー中村ヒロキの純度の高い本能と哲学を、ローランド・ベルガーの福田稔が聞いた。
──visvimは独自のポジションを確立しているブランドだと思いますが、成長してきた要因はどこにあるとお考えですか?
自分のフォーミュラを早い段階で確立することができた、ということだと思っています。感覚・センスと、ビジネスとしての観点、両者のバランスを取ってきました。トレンドを意識することは一切ないですね。
──そのフォーミュラを私なりに言語化させていただくと、世界中の伝統的な意匠を、中村さんの視点を通して現代的にミックスしたり、モダナイズしたりしていくことなのかなと。
スタートした当初から意図していたわけではないんです。市場にさまざまなものが溢れている中で、自分だったらこれが欲しい、という感覚を具現化することをまず考えてきただけで。
自分の興味や関心と向き合う中で、歴史のある古いものや、地域の特性が濃く出ているものに数多く触れました。タイムレス、伝統的、だけど今の世の中にフィットするコンテンポラリーなものへの理解が深まってゆき、それが抽出されてブランドとしてのフォーミュラになってきたのだと思います。
「My Archive」という、中村氏が実際に世界中を巡り、各地で出会った様々な伝統工芸品などをまとめた一冊
──中村さんは意識していないかもしれませんが、ファストファッションが流行し、一方で大量生産・大量消費へのアンチテーゼとして、いいものを長く使いたいという思考を持つ人たちが増えていて、そうした流れに沿っていると感じます。
意識はしていません。世界中のマーケットを肌で感じ、自分の信じるものをビジネスモデルとして成立させるのはどうしたらいいか、ということを突き詰めていった結果、今おっしゃっていただいたようなブランドになっているのかもしれません。僕が興味のあることのほとんどは、消費のサイクルの中に入っているものではないんです。
──中村さんの価値観は世の中の先をいっていて、それに追いついている人がいる。それはグローバル市場でも通用していると思うのですが、国内、海外の売り上げはどういうバランスですか?
シーズンによってブレはありますが、約60パーセントが海外の売上です。