ビジネス

2018.07.12

空気環境も選ぶ時代に「小さな大企業」がつくった世界基準の装置

エネフォレスト社長 木原寿彦(右)


それでも木原の前には「世間の常識の壁」が立ちはだかった。その壁を打ち破って製品を売るためにはどうすればいいかを木原は真剣に考えた。

大企業の看板はない。まずは自分自身が初対面で信用してもらえなければ次はない。木原は短時間でお客様のためになる製品だと理解してもらうためのプレゼンテーション技術を試行錯誤しながら進化させていった。

最初に買ってくれたのは介護施設

最初にエアロシールドを買ってくれたのは、介護施設だ。施設のスタッフ、施設の利用者、施設の経営陣にとってのメリットを熱心に話す木原の姿に、施設の経営者が心を動かされたのだ。

「何回も通った末に、ようやく『君がそこまで言うんだったらやってみよう』と言って1台買ってくれたんです。大切な人のため、お客様のため、社会のためという『利他』の気持ちが強くなってからは、周りに応援者や紹介者が増えていきました。この時期の苦労が、今の自分の財産になっています」

エアロシールドのこれまでの導入実績は、大学病院、産婦人科、小児科、歯科医院、介護施設、こども園、コールセンター、社員食堂、菓子工場などを中心に約2000台を超えた。導入した介護施設やこども園からは「インフルエンザ感染者ゼロが3年続いている」「園児、職員の欠席者が明らかに減った」などの喜びの声が届いている。

電車や飛行機、バス、タクシーなど不特定多数の出入りがある空間は感染症を媒介する場所になりうるため、今後は交通インフラや災害時の避難所にも市場を広げていきたいと木原は言う。

「世界の紛争地や大規模災害時の避難所などでは、安心できる空気環境が担保されていません。避難で体力的にも精神的にも疲弊している時に、感染症のリスクはより高くなる。そうした環境を少しでも改善する力になりたい」

空気環境を選ぶことが「常識」になれば、市場規模は爆発的に拡大する。私たちは今、「新たな常識」の始まりを見ているのかもしれない。

文=畠山理仁

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