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2018.07.11 08:30

「言葉は神なり」 10年後のリーダーへ贈る言葉

あいおいニッセイ同和損保社長の金杉恭三

あいおいニッセイ同和損保社長の金杉恭三

2016年春。TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)のギル・プラットCEOが来日して、あいおいニッセイ同和損保の本社を訪問した。プラットはロボット研究の第一人者で、自動運転車開発のためにTRIのCEOに就任した直後。社長の金杉恭三の顔を見るなり、来訪の目的をこう告げた。「BIG(Box Innovation Group Limited)を買収したのが日本の会社だと聞いて驚いたんだ。いったい どんな会社なのか知りたくてね」

保険ベンチャーのBIGは、テレマティクス保険の英国最大手。テレマティクスは「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語で、運転状況を把握して保険料を設定したり、危険な運転をリアルタイムで察知してドライバーに注意を促すことが可能になる。あいおいニッセイ同和損保は15年3月に買収を完了して、BIGを傘下に入れた。

意見交換は1時間以上にわたった。熱を帯びたのは、理想のモビリティ像に話が及んだとき。自動運転というと、人間が何もしなくても勝手に目的地に連れていってくれる自動タクシーのような技術をイメージする人が多い。しかし、プラットが目指す自動運転は違う。運転がうまくない人でも、何事もなくスピードを出せて、駐車場にサッと入れられて、気持ちよく家に帰れる。あらゆる人たちがそうやって安全に運転を楽しむための“ガーディアンエンジェル”をつくりたいというのだ。

「思いは私たちも同じでした。テレマティクスというと、リスクに応じて保険料を安くしたり、高くするための技術だと思われがちです。しかし、私たちがやりたいのは、この世から事故をなくして、一人でも多くの人の命を救うこと。そのためのテレマティクス保険なんです」

じつは同社はすでに04年からテレマティクス保険の取り扱いを始めている。ただ、市場には受け入れられなかった。そのころ営業にいた金杉も、「時代が追いついていない」と懐疑的だった。
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文=村上敬 写真=佐藤裕信

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