当然、国内にもテクノロジー企業や製薬会社が次々と生まれている。昨年比19人増の計119人のビリオネアを有しており、ヘルスケア(20人)から最も多く生まれている。テクノロジーはまだ8人だが、企業数が増えていることもあって今後増える可能性は高い。また国連経済社会局が2017年6月に発表した調査では、インドは24年頃までに人口が中国を抜いて世界一になると予測している。市場の拡大は、同国の起業家にさらなる商機をもたらすだろう。
このような背景からも、ビリオネアの数は増えていく可能性が高い。そうしたなか、注目されているのが「ビリオネア・ネットワークの台頭」である。コンサルティング会社PwCと投資銀行UBSが合同で富豪について実施した調査「ビリオネア・インサイト2017」では、「ビリオネアが互いのネットワークをいっそうレバレッジするようになる」と予測している。
今までも富豪同士、互いにビジネスや投資、慈善事業を持ちかけるなど、協力してきたが、その関係がますます緊密になるというのだ。特に、インターネットやスマートフォンなどのコミュニケーション手段の増加に伴い、相互の間の距離が縮んだ上、国境や時差を超えて直接やりとりできるようになった点が大きい。
こうした動きについては、「富豪同士でつながり、『コミュニティ』を築くようになっている」と、カナダ外務大臣で『グローバル・スーパーリッチ 超格差の時代』(早川書房刊)の著者クリスティア・フリーランドも本誌に語っている。
「(ビリオネアは)国境を越えて、『トライブ(部族)』化しています。彼らは日常的に商取引をし、同じ業界の会議に参加し、海外で同じホテルに泊まっています。ふだん会うことの少ない同胞よりも連帯感が強まりやすいのです」
今年の1月には、世界的投資家のウォーレン・バフェットが、アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスCEOや金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOとヘルスケアの合弁企業を立ち上げると発表して世間の度肝を抜いた。
今後、富豪のネットワークが広がることで、同じようにスケールの大きな事業が生まれることは十分に考えられる。