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2018.07.11 08:00

英王室もプラスチック削減へ 21世紀のサステナブルな海洋戦略とは

Rich Carey / Shutterstock.com


3年前に北京で中国の政府高官と会食をした際の会話を思い出す。彼は非常に洗練された身のこなしで、完璧なブリティッシュイングリッシュを操り、ウィットにとんだリズムの良い受け答えをする。目をつぶっていれば目の前にいるその人は英国貴族に違いないと思うだろう。
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その高官と海洋資源について意見交換をしていたところ、「Quantity, Quality, then Sustainability。まずは量。量の確保ができたら質。それから最後に持続可能性です。中国はまだQuantityのレベルにいます。人民を飢えさせないことが課題です。サステナビリティまでの道のりは遠いのです」と言われたのを鮮明に覚えている。

しかし、現実にはそれから3年の間に、中国の持続可能性への対応は飛躍的に進んだ。中国の商社に日本の水産業者が漁獲証明書を取得するよう要請される話も耳にした。

「Ocean Outcomes」という海洋環境保全団体が中国にオフィスを構え、国際アライアンスGSRA(Global Seafood Rating Alliance)のメンバーとなり、中国版の持続可能な水産資源のレーティング(格付け)プログラムを企画するまでになっている。GSRAには前述した英国のMCS、アメリカのシーフード・ウオッチや筆者が取り組む日本のブルーシーフードガイドも加盟している。
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先進国のトレンドに乗り遅れた日本

話を英国に戻そう。ロンドンの鮮魚売り場をまわると、独自のサステナビリティへの取り組みが手に取るようにわかる。

百貨店セルフリッジの鮮魚類売り場には「弊社は海洋プロジェクトの一環として絶滅危惧種は売りません」という大きな看板がかかっている。ウォルマートでもサステナビリティを図る赤・黄・緑の表示があり、「サステナブルシーフード」と書かれた大きなサインも目を引く。


セルフリッジの鮮魚売り場に掲げられた看板

庶民派のセインズベリーでもMSCのブルーのロゴがついた製品が沢山並んでいる。イギリスのマーケットは完全にサステナビリティを売り物にする時代となっている。

EU諸国でも非常に厳しい漁獲証明書の提出が義務付けられており、英国も離脱したとはいえ少なくとも2019年まではその法制度の下に漁獲管理がされている。

筆者はどのようにこの制度が現場で守られているかを探るため、ロンドンの端に位置するロンドンの築地ともいえる、Billingsgate市場を訪れてみた。築地市場を想像しながら訪れると、清潔で整然と整っているものの、はるかに小規模で活気のないこの市場に少しがっかりしてしまう。



気を取り直して市場をめぐると、小さく区画分けされたブースのそれぞれが、魚種、漁場、漁法、学名など細かく漁獲証明を明記するボードを、柱に掲載しているのが目につく。冷凍食品は店舗での表示義務はなく、代わりに製品の外箱への漁獲証明が義務付けられている。これらの情報はトレーサビリティの確保に重要である。

情報が港から末端の小売まで伝達されなければ、いつどこで誰がどのように漁獲したかわからず、IUU(Illegal, Unreported and Unregulated)と言われる、違法・無報告・無規制の漁業による製品を知らず知らずのうちに流通させ、消費者は結果的に犯罪に加担してしまっていても、それを知る由もないのである。

ちなみに日本ではまだ漁獲証明もトレーサビリティ証明も法制度化されていない。世界の先進国のトレンドに完全に乗り遅れた状態で、日本製の水産製品はサステナビリティという付加価値がないために、国際市場で売り負けしていくうえ、日本近海の資源を枯渇させているのが現状である。築地から豊洲へ移る時代にBillingsgateやEUのような市場に進化できるか注目したい。
 
21世紀は海洋のサステナビリティを制する者が7つの海を制する時代。計画的に持続可能な海洋資源の利用ができている国が、海洋資源による経済成長の恩恵を受ける。

プラスチックゴミ問題、水産資源の枯渇問題、違法漁業問題など、解決すべき問題が海に山積しているいま、エリザベス女王も自らユニオンジャックを振った。これを機に日本の人たちの目も、さらに海洋環境に向けられることを期待したい。

連載:海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
過去記事はこちら>>

文=井植美奈子

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