放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


実は、僕が最初に行った「勝手にコンサル」もお弁当を作ることだった。

僕のオフィス「N35」から歩いて3分ほどのところに「司亭」という小さなお弁当屋さんがある。飯倉界隈のサラリーマンたちに愛されている店なのだが、03年、近所の大手企業が移転するという噂を聞いた僕は、そのお弁当屋さんが潰れてしまうのではないかと勝手に心配し、新しいお弁当の企画書を持参した。

第1弾として「N35弁当」、第2弾は「N35弁当 野菜バージョン」。その話を当時連載していた雑誌のエッセイに書いたところ、注文が増えて店の定番メニューになったのである(笑)。

調子に乗った僕は、第3弾として、ウスターソースにつけたコロッケとヒレカツと卵焼きが入っている「ソースどんぶり」を提案。さらに、麻布警察署の刑事がよく買いに来ると店主に聞いて考えた第4弾「満腹警察24時」もメニューに加わり、これらの“勝手にプロデュース弁当”は「満腹」以外、いまも司亭で販売されている。

広告費の粋な使い方を考える

お弁当はメディアになる!

司亭での成功体験をもとに、08年、お弁当をPRに利用する企画を思いついた。それが東武特急スペーシアで販売した車内限定お弁当「まごにわやさしい ひざの上の食堂」だ。

体にやさしく健康的な栄養バランスで組み合わせた和の食材の頭文字「まごわやさしい」に、肉の「に」を加え、牛すき焼きの老舗「人形町今半」にプロデュースしてもらったお弁当は、西暦にちなんで税込み2008円で販売。高級食材はもちろん、パッケージや専用袋なども凝って、三猿や眠り猫のイラストを描いたり、割ると金粉が舞う“当たり”の箸などを同封したりして、旅を印象づけるデザインを工夫した。スペーシアの広告費をあてることで、原価2008円以上の高級弁当が完成したというわけだ。

当時はSNSがさほど一般的ではなかったけれど、それでも食べた方がブログで書いてくれ、マスメディアにも多数取り上げられた。お弁当をメディアにしたという例ではひとつの成功例ではないだろうか(しかも広告費を弁当の売り上げで回収できるという点がこの企画のミソである)。

毎年9月に日比谷公園の松本楼で行われる、日本ユニセフ主催の「10円カレーチャリティ」がニュースに取り上げられるが、街で号外を配るようにお弁当を配ったら、最強のチラシ、最強のニュースメディアになると僕は思う。

原価は35%程度だから、1000円程度の立派なお弁当を350円で製造できる。その350円でひとつのメディアを配布すると考えたら、1000食作ったところで費用はたったの35万円だ。1000食配れば行列もできるし、情報もSNSで拡散できる。メディアの取材が来る可能性だって無きにしもあらず。

地方自治体の皆さん、地域活性のためにその地の魅力を表現するお弁当を作って、無料で配ってみてはどうでしょう。中途半端な広告を打つより、ずっと効果があると思うのですが。

【連載】小山薫堂の妄想浪費
過去記事はこちら>>

イラストレーション=サイトウユウスケ

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