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地方創生のキーマン

地域に埋もれた魅力を起業家の力で掘り起こす

人口約2万8000人。柳田國男の「遠野物語」の舞台となった町、岩手県遠野市。

「民話のふるさと」を謳った伝統文化や観光資源はあるものの、少子高齢化による人口減少や地場産業の衰退など、日本各地の地域と同様、自治体としての悩みは尽きない。そんな遠野市でいま、壮大なチャレンジが行われている。

それを牽引するのが、ポスト資本主義を掲げる活動プラットフォーム、「Next Commons Lab(以下NCL)」だ。NCLは、自治体からの委託を受け、地域資源の可視化と地域課題を解決する仕組みをコーディネート。地域おこし協力隊(総務省が設立した取組み)の制度を活用し、対象地域に起業家をめざす10数名の移住者を呼び込み、新たな共同体を形成する。

新事業の創出をめざす集団がまとまった期間に「集団移住」することで、地域に新たなコミュニティができ、そのなかで相互的な連携や支援リソースも共有することができる。現在、全国でプロジェクトを展開しており、ここ遠野市でのチャレンジはその代表的なものとなっている。


月1回行われるメンバー全員が集まるオープンラボ。事業の悩みや進捗を共有する場だ。

NCLのプロジェクトの大きなポイントは、ひとりひとりが持っている資質を十分に生かし、自己実現に挑戦することを支える社会的インフラ、「ベーシックアセット」の構築を目指しているところだ。

起業家は地域おこし協力隊の枠で移住しているので、事業構築に向けての活動資金を利用することができ、NCLが用意する空き家をリノベーションしたシェアハウスやコワーキングスペース、起業をめざすコミュニティなどに自由にアクセスすることができる。

地域おこし協力隊の活動費は1人あたり400万円。そのうち250万円が起業家をめざす本人への活動支援金で、残りの150万円は活動経費や現地の事務局費など、起業家を支援する用途に使われる(自治体によって金額は異なる)。

儲かりにくい事業にチャレンジして、儲かる事業、持続する事業にする。それが起業家の価値であり、チャレンジする意義があるものだと、私は考えている。そして、それには、個人が立ち上がり、現行の社会が抱える制約やしがらみにとらわれない事業を生み出すための基盤、つまりベーシックアセット(ベーシックインカムと住まいなどのインフラ)が必要なのだ。

40年ぶりに伝統のようかんを復活

さて、遠野市でNCLのチャレンジがスタートしてからまもなく2年。ようやくプロジェクトの種が芽生えだしてきた。

まず、遠野市小友町(おともちょう)で約40年前に廃業したようかんを復活させるプロジェクト。NCL遠野のデザインプロジェクトとして参画したメンバーがコーディネートし、地元の女性たちとともにようやく製造段階にまで到達した。今後は、「小友ようかん」の名称で、訪問先へのお供として、お土産を販売していく予定だ。



プロジェクトを担当する橋本亮子さんは、次のように語る。

「単独で移住して起業していたら、従来のお金の稼ぎ方により執着してしまったと思います。しかし、それでは地方に来た意味がない。自分自身のチャレンジという意味でNCLに参加してよかったと思います。起業家同士のコミュニティがもたらす、共感や情報共有が大きかったです」

クラフトビールをつくるプロジェクトも緒に就きつつある。遠野市は、日本でもトップクラスの生産量を誇るホップの生産地。キリンビールと連携し、オリジナルのクラフトビールづくりを行なっている。先日開業したばかりの遠野醸造では、オリジナルのクラフトビールをお店で飲むことができる。


文=小幡和輝

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