3期連続で減少していた北米市場での売上高は同期、前年比で3%増えた。為替変動の影響を除いた売上高は大中華圏で同25%増加。また、同社にとって米国に次いで大きな市場である欧州では同10%増となった。米市場での成長について同社は、「健全で持続可能なもの」としている。
投資家らは今のところ、同社に対して持つ潜在的な不安に目をつむり、ナイキ経営陣が「成長企業」と呼ぶ同社の好調ぶりを認めている。こうした同社の現状に関連して、注目すべき点は次の5つだ。
1. データ駆動型の店舗
ナイキは7月12日、ロサンゼルスに新たなコンセプトショップ「ナイキライブ」を開店する。周辺地域に住むNIKE+(ナイキプラス)のメンバーからデータを収集。それに基づき、店内に置く商品を決める「データ駆動型」の店舗だ。
2. オンライン販売
ナイキもその他の多くのブランドと同様、オンラインで商品を購入する消費者をより重視するようになっている。同社は昨年10月、アマゾン・ドットコムや中国のアリババの「天猫(Tmall)」、独ザランド(ZALANDO)やといった提携する各社と自社サイトを通じた販売による売上高が全体に占める割合は現在のおよそ15%から、5年後には30%以上に増えるとの見方を示した。
3. スタートアップの買収
ナイキは「目標とする成長の実現に向け、予測と分析に関する高度なツール」を持つことを理由として今年3月、データ分析会社の米ゾディアック(Zodiac)を買収した。4月にはコンピューター・ビジョンのスタートアップ、イスラエルのインバーテックス(Invertex)を傘下に収めている。
マーク・パーカー最高経営責任者(CEO)は、製品のデザインから調達、製造までのそれぞれ分野において、データを活用していく方針を明らかにしている。
4. 新製品を重視
アンドルー・キャンピオン最高財務責任者(CFO)によれば、前年度のナイキの成長の80%以上に貢献したのは新製品だ。
パーカーが「ライフスタイル(アスレジャー)を念頭に開発した初のシューズだと説明する今年発売の「エアマックス270」ラインは、同シリーズの中でも発売時の売れ行きが最も好調だという。また、「エピックリアクト」の新製品はすでに、販売されている価格125ドル(約1万3800円)以上のランニングシューズの中で、販売実績で第2位となっている。
5. 「スニーカーヘッド」たちの熱狂
ナイキに関する熱狂を呼び起こすことにおいて、大きな役割を担うのが熱狂的なスニーカーコレクター、「スニーカーヘッド」たちであることは間違いない。ナイキは「Nike SNKRS」アプリの導入によって、彼らの熱狂をデジタルな体験に変えた。
例えば、全米プロバスケットボール協会(NBA)のスター、レブロン・ジェームズのシグネチャーモデルのシューズは、試合中にジェームズが着用しているのを見たファンがその場ですぐに、アプリを通じて購入できるようにした。また、ラッパーのケンドリック・ラマーとのコラボレーションによる「コルテッツ・ケニー・3」は、ライブ会場に来たファンのみがアプリで購入できるようにした。
パーカーはこのアプリについて、「驚くほどの需要を生み出している」「2019年度とそれ以降のナイキの業績を押し上げる最大の機会の一つ」だと述べている。