7回目の課題は「控えめに馨らせる」。あからさまに香りを纏うのではなく、さりげなく漂わせたい。そして、清潔感があり、それでいて自分というものを伝えられるように。そんな香りの使い方を身につけたい。
思えば香りに興味を持ったのは中学生の頃。フレグランスを愛する僕ではあるが、忘れてはいけないのがTPOだと思っている。特に仕事の場面では。映画作品の音楽を担当することも多いのだが、最終段階での打ち合わせなど緊張感のある場には、石鹸の香りに頼ることにしている。また、全員が汗を流し必死に撮影している現場では、自分もその一員として、無臭を心掛けるべきであると考える。
ところで僕の妻は香水を身につける習慣がない。局付きアナウンサーの不文律なのだそうで、今もその名残で無香派である。香り好きの僕にとって、それはすこし寂しい。そこで香りの愉しみを少しでも分かち合いたくて、石鹸には工夫している。実は永らく愛用のものが廃番となり、海外に行く度に買い集めたことがある。特別なことがあった時にだけ、ひとつずつ大事に下ろしている。
現在日常的に使っているのはサンタ・マリア・ノヴェッラのルシアン・コロン。中性的な香り、洗いあがりの感覚が僕の好みに非常に合う。香りは自分がどんな人間かを伝えるコミュニケーションツールでもあると思う。いつか日本特有の文化である香道にも挑戦したいと考えている。
<SANTA MARIA NOVELLA MEN’S SOAP, COLONIA RUSSA FRAGRANCE>
サンタ・マリア・ノヴェッラ メンズソープ ルシアン・コロン 130g ¥2300/サンタ・マリア・ノヴェッラ 銀座 03-3572-2694
いわしろ・たろう
1965年、東京都生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科首席卒業、同大学院修士課程首席修了。『レッドクリフ』はじめ、多数国内外の映画音楽やドラマ音楽を手掛ける。夫人はアナウンサーの松本志のぶ氏。