ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


アメリカは史上最高のM&Aを記録

実は、「ウォール・ストリート・ジャーナル」によれば、今回のPillPack社買収劇で、アマゾンの競争相手は、世界一の小売店ウォルマートだったようだ。PillPack社のウェブサイトなどによれば、同社がこれまで資本調達をしてきたのは合計で約130億円。その会社が約10倍の1100億円で売られたことからも、買収競争は熾烈だったと推測できる。

このことは、アメリカにおける企業買収の目的が、マーケットシェアや特許技術の取得などの伝統的なテーマからは離れ、個人データの質と量の取得合戦に移行しつつあることを示唆している。

アメリカではこのところ企業合併がどんどん進む。ウォルト・ディズニーは21世紀フォックスからエンタメ部門の営業譲渡を受けたし、AT&Tがタイム・ワーナーを買収、スプリントがT-Mobileと合併と続き、今年はおそらく史上最高のM&A(実額ベース)を記録すると見られている。

一方で、フェイスブックが「過去にどのような形で他社に同社のデータアクセスを許可してきたか」ということを、6月29日に米議会に対して開示した。まさに企業経営は、成長の右肩上がりのカーブを競い、収益の最大化で企業価値を高めていくという使命よりも、いかにして「合法性を固めながら個人データの取得パイプを他社に先駆けてとっていくか」に焦点が置かれているようにさえ見える。

それはまるで、いま儲けなくても、「パイプ」さえつけておけば、あとはAIがデータ分析をし、最適なマーケティングを自動的にやってくれるという確固たる信仰があるかのようにも思える。いずれにしても、アマゾンの今回のヘルスケア分野への進出は、同社が持つ最大の「武器」であるレコメンデーション機能をさらに強化するものであることは確かだ。

文=長野慶太

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