仮想通貨業界、求められる高いマネロン意識[週間ビットコイン動向]

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そのような風潮のなか、仮想通貨業界は、既存の金融サービスよりも一段高い感覚が求められるとの認識だ。話は単純で、既存の金融サービスにおける法定通貨の送金は、口座番号、送金先の金融機関名等は明確に判別できる。もちろん、複数の金融機関を経由して資金を送金するケースもあるが、根気強く対応すれば資金の流れを追うことは可能だろう。

一方、仮想通貨では、送金先アドレスが海外なのか国内なのか容易には判断できないほか、銀行の海外送金と比べるとかかる時間も圧倒的に短い。全て当てはまるとは思わないが、匿名性の高い仮想通貨のマネロン及びテロ資金供与(ML/FT)リスクが高いと判断されても致し方ないだろう。

つまり悪い考えを持つ人間が集まりやすい土壌がそこにあるということが問題なのである。

仮想通貨業界は決して筋の悪い人間ばかりではないが、最先端の技術を悪いことに用いようとする人間を排除する壁が脆かったというのが現状だろう。

既存の金融サービスがこれまで数十年間かけて築いてきたAML/CFTのシステム・ノウハウを、仮想通貨業界はこの数年(数か月かもしれないが)で一気に作り上げなくてはならない。かなり高いハードルではあるが、仮想通貨交換業を運営するのであれば最重要な項目との認識だ。

こうした体制を構築していくのは容易でないことは明らかだ。コストをどこまでかけられるか体力勝負的な側面もあり、業界内での再編は進むだろう。今回の行政処分を見る限り、各社は7月下旬までに体制構築の方針などを提出することが求められている。こうしたスケジュールを考慮すると、今夏は仮想通貨業界の動きが活発化しそうな予感がする。

ビットコイン価格はしばらく70万円前後でのもみあいが続くだろう。国内仮想通貨業界の混乱が沈静化するまでは明確なトレンドは出ないと推測する。明確なトレンドが出るのは、自主規制団体のルール作りなどが終わると見られる9月もしくは10月辺りか。週間の想定レンジは63万円から72万円とする。

連載:「仮想通貨」マーケット実況
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文=田代 昌之

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