医療のデジタル化の先にある「アナログ」な世界

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しかし私は、こうしたメリット以上に「医療情報は、患者さん自身のものでもある」という文化が根付いていくことを期待しています。

これまでは医療情報は全てカルテの中で、過去の自分の検査結果を見るにも、医師に相談してコピーをもらって……と一苦労でした。すると「医療は医師のもの」「いざという時にだけ頼るもの」で、普段は食事や運動になんとなく気をつけるだけ、になってしまいます。

しかし自分の通院履歴がスマホで確認できるようになり、検査データが棒線グラフで経年比較できたり、処方薬の情報を検索したりできるようになれば、医療はもっと身近で関心を引くものになるでしょう。

「健診の結果、HbA1c(糖尿病を判断する指標のひとつ)はギリギリ基準値だけど、過去3年間で上がり続けてるから、このままだと来年は基準値を越えてしまいそうだ」と日々の食事に気を遣うようになったり、「以前に出された薬で蕁麻疹が出たから、薬の名前を先生に伝えよう」と注意深くなることもできます。

自分の医療情報が身近になることで、次の通院で聞きたいことも具体的になるかもしれません。すると、医師とのコミュニケーションがより深く、継続的なものに変わっていくのではないかと思います。



医療xITが進むほど、アナログがカギになる

患者さんの身体は、患者さん自身のものです。もちろん医師はできる限りの治療を行いますが、やはり本人が自分のデータを確認して必要なケアを考え、病気にならないように具体的に意識し行動することが、健康維持には一番です。

そんな文化ができることで、医師側のコミュニケーションも変化があるでしょう。これまでは一方的に「伝える」ということが多かったですが、患者さんの理解度が上がっていけば「話し合う」ことや「相談にのる」ということが増えていくはずです。

医療のデジタル化が進むことで、不要なものが減ったり患者の医療リテラシーは向上していくでしょう。医師も患者も「診療」そのものにもっと向き合える環境が整います。

医療×ITが進むからこそ、医療の未来は、アナログな「双方向コミュニケーション」こそが、医療の本質として大切にされる時代になるだろうと思います。

連載 : ドクター兼起業家が教えるこれからの医療
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文=豊田剛一郎

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