当時、同社のマーケティング責任者のフィリップ・シラーはこう述べていた。「我々が前進を続けていく理由──、それは勇気だ」
彼らが主張するように、勇気ある決断は新たなイノベーションの源だ。その後、多くの人々がブルートゥース接続のヘッドフォンを買い求めるようになった。しかし、充電の心配が無い有線接続のヘッドフォンを好む人は今でも多い。わざわざ高い金額を投資して、アップルの「AirPods」に買い替えたくないという人も多いだろう。
ただし、AirPodsが成功したプロダクトであることは事実だし、新モデルが出れば売上はさらに伸びることも見込まれる。家電量販店「Best Buy」のセールスランキングを見ると、AirPodsはアップル製品のなかでここ数カ月の間、売上のトップに立っている。
しかし、ここで指摘したいのはランキングの2位に非常に気になるアイテムが入っていることだ──。それは、ヘッドフォンジャックが無いiPhoneを有線接続のヘッドフォン対応にするための「Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」なのだ。
米国では9ドル(日本では900円)で販売されるアダプタはモダンなiPhoneを、過去の遺産である旧式のヘッドフォンとつなぐ架け橋だ。そのアダプタがBest Buyで売れ続けているという事実は何を示しているのだろう──。アップルがiPhone 7/ 7 Plus以降のモデルにアダプタを同梱して販売していることを考えると、これはアダプタを買い換える人がそれだけ居ることの証拠といえる。
アップルの経営陣は今後も、iPhoneが未来志向のデバイスだという姿勢を崩さないだろう。ユーザーの一定数もアップルの決定に従うだろう。一方で、旧式のヘッドフォンを手放せない人たちはアダプタを購入し、紛失したらまた買い換えるのだ。
アップルが勇気をもって未来に進むことは素晴らしいことに違いない。しかし、古いものにお金を払わざるを得ない人たちも大勢いる。