北欧発、次世代デジタル人材に必須の「倫理」が学べる学校

courtesy of Hyper Island

スウェーデンの社会人向けスクール「ハイパーアイランド(Hyper Island)」では、生徒が気まずくなるほどの厳しい質問を教授が繰り返すのが日常だ。例えば、生徒がデジタル領域のビジネスモデルを考案すると、教授たちが倫理的な観点から様々な問題点を指摘してくる。

今月初めスタンフォード大学は、テクノロジー関連のコースで倫理教育を強化することを明らかにした。しかし、ハイパーアイランドは20年前から倫理教育に重点を置いた教育を提供している。

ハイパーアイランドは、英国のマンチェスターやシンガポール、ニューヨーク、サンパウロにもキャンパスを持つ。「教授たちは、生徒にデジタルサービスが社会に与えるインパクトについて多くの質問をぶつける」と同校の共同設立者であるJonathan Briggsは話す。

例えば、教授は生徒から意見を聞く前に、「パーソナライズされたサービスに賛同する」と「プライバシーを尊重するべき」のいずれかに投票させ、2つのグループに分けることから授業を開始する。

「これは生徒たちを居心地のよい環境から引っ張り出すのに有効な方法だ」とBriggsは言う。かつて、Briggsのクラスでフィリピン人学生がコンテンツ・モデレーション(インターネット上の不適切なコンテンツを監視する業務)を開発途上国にアウトソースするビジネスモデルを考案したことがあった。

労働コストの低い国にアウトソースすれば利益が大きくなることは明らかだったが、生徒には倫理面での配慮が不足していたという。「業務に携わる人々は、非常に暴力的な画像や映像を見ることになる」とBriggsは指摘し、生徒が生み出そうとしているのは「良い仕事」なのか「悪い仕事」なのか尋ねたという。また、この仕事に長く携わった人々が将来どのような影響を受けるか考えさせたという。

マンチェスター校の責任者を務めるTash Willcocksによると、平均的なスマートフォンユーザーは、1日に150回以上端末を確認するという。「我々は、スマートフォンやソーシャルメディアから多大な影響を受けている」とWillcocksは話す。

倫理教育はIT業界の必須の課題に

しかし、グーグルやフェイスブック、アップルを輩出したスタンフォード大学をはじめとするテクノロジー分野のエリート校では、倫理教育を十分に出来ていない。一部では、だからこそ人々が病みつきになるようなサービスを生み出すことができたという指摘すらある。

ハイパーアイランドでは、世界中で約150名の学生が学んでおり、その多くはオンラインではないリアルな授業を受けている。学費は年間1万1000ユーロ(約140万円)だ。「学生たちに倫理的な配慮を教えることは、筋肉をトレーニングするのと同じだ」とWilcocksは話す。

ハイパーアイランドは、学校と並行してコンサルタント事業も展開しており、大手企業を相手にデジタル化推進のトレーニングを行なっている。生徒の多くは週末に授業を受け、平日は企業で働いている。Briggsによると、この方が授業で学んだことをすぐに業務に活かすことができるという。

「我々は今日のニュースの中から授業で教えるテーマを選ぶこともある。私はスタンフォードやハーバードを尊敬しているが、リアルタイムで起きていることを題材にできることが我々の強みだと考えている」とBriggsは話した。

編集=上田裕資

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