仕事もない、お金もない。何もすることがなくなっていたニート生活の中でゆうこすは、「私ってもともと何が好きだったんだっけ?」と考え始めた。
「昔からずっと買い物してる時間が好きだったなって思って。何を買っている時が楽しいかな? コスメだ。なんでコスメが好きなんだろう? 可愛くなれるから。なんで可愛くなりたいんだろう? 可愛いといわれたいからだ。誰に可愛いと言われたいのだろう? 好きな男の子に言われたい。私はモテたいと思ってこれまで過ごしてきたんだ」
ゆうこすはこの自問自答から自分の今後進むべき道のヒントを得る。
「自分の性格や顔は変えられない。だったらこんな私を好きになってくれて、共感してくれる人を探せばいいじゃん」
彼女の頭のなかに教室のイメージが浮かんだ。クラスの中にきっと一人はいる、モテたい、ぶりっ子したいと思っているけど、周りの目を気にしてできない女の子。
「そんな女の子たちの代弁者になろうと思ったんです」
まず自分を知ることから始めたゆうこす。そこで見つけたありのままの自分に、共感し、好きになってくれる人のために、自身を「モテクリエイター」と名乗り活動を始める。自分と同じような、モテるために「ぶりっ子したい」という欲求を持っている人が共感できるような情報を、SNSを通じて発信し続けてきた。
「自分と同じぶりっ子したい女の子たちを頭に思い浮かべ、自分自身も『100%ぶりっ子』になってSNSや雑誌を見ていると、みんなが欲しい情報が見えてきて。そこにハッシュタグをつけて情報を発信する。まずは私を知ってもらうというよりも、“ハッシュタグの橋”を渡ってきてくれた人が、その情報を好きになってくれることを意識しています」
そんな、彼女の徹底的に相手の目線に立って発信し続ける姿勢に、フォロワー数100万人の理由を見つけることができた。
「なぜ?を繰り返す自分理解」と「徹底的な相手思考」
考えてみると、SNSでの発信だけではなく、このゆうこすの姿勢はファンを獲得したい企業・個人、すべてに通ずるものではないだろうか。
自分自身や自分たちの商品・サービスのどこを好きになってくれているのだろう。彼らは何を求めているのだろ。実は成功する企業に共通するのも、この「コアな顧客との対話」だ。
Forbes JAPANでは毎号のように、「顧客との対話を掘り下げることで、客の気持ちが理解でき、さらに自分の本当の強みが見えてくる」といった企業人たちのストーリーを紹介している。そして彼女自身、こう言うのだ。
「SNSの声が自分を成長させてくれたのです」
インスタグラム、ツイッター、YouTube…それぞれのSNSのファン層に合わせて異なる情報を発信するゆうこす。そのこだわりについて尋ねると、
「でも、そうじゃなきゃ親切じゃなくないですか?」
と、逆に彼女は問うのだ。
小難しいマーケティング戦略を勉強するよりも、ファンを獲得したい個人や企業の学ぶべき姿が、このゆうこすの「相手を気遣うSNS」にあった。
トークセッションが終わり、質問タイムに入ったとき、ゆうこすが「ここって、写真を撮ってもらって大丈夫ですよね?」と、司会のアカデミーヒルズの責任者に聞いた。そして、すり鉢状の席を埋めた客席に向かって、こう声をかけた。
「みなさん!ぜひ撮った写真や質問を、ハッシュタグ、『#ゆうこすアカデミーヒルズ』で、いま投稿してみてください!」
その瞬間、会場の150人が一斉にスマホを取り出し、ゆうこすにスマホを向けた。シャッターの音が鳴り響き、彼女に向けて質問が打ち込まれていく。たった3人のファンを100万人に増やした24歳。その理由をこの空間に見た気がした──。