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2018.06.29

日本のカジノ法案に外国企業が高揚しない理由

Nejron Photo / shutterstock

日本では6月19日、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案が衆院本会議で可決された。さらに、同法案の成立を目指して通常国会の会期が7月22日まで延長された。だが、世界中のどのカジノ運営会社も、業界の最後のフロンティアともいえる日本の計画について、あまり高揚感は持っていない。

それでも、日本が世界第3位の経済大国にふさわしい魅力的なIR、訪日外国人を年間およそ6000万人に倍増させ、外国人旅行者数で世界第5位になることを目指せるIRを生み出すコンセプトを検討することはないのだろう。政府IR推進会議の美原融委員は、政府の方針が変わることはないと明言している。

IR法案の成立に向けた日本政府のアプローチには、矛盾した部分がある。シンガポールの象徴的なIR施設、マリーナベイ・サンズに示されるIRの経済効果やイメージ向上効果を期待する一方で、賭博を巡る問題への警戒感を強めている。

また、これまでの複数の調査からは、日本国民の3分の2がカジノ合法化に反対であることが分かっている。パチンコ業界と組織犯罪や北朝鮮への送金との関連性が指摘されることが、ギャンブル全般に対する国民の否定的な見方につながっている(業界関係者は、そうした関係があったのは遠い過去の話だと語る)。

日本のIR実施法案には、シンガポールと同様にカジノの面積を施設の延べ床面積の3%までとすることや、国内在住者からは6000円の入場料を徴収すること、国内に整備するIRは3カ所、運営事業者3社までとすることといった制限が盛り込まれている。

外国のカジノ運営会社の中には、東京や大阪などの大都市圏での整備が認められるIRであれば、100億ドル(約1兆1000億円)を投資する用意があると明言しているものもある。ゲーミングライセンスを取得した企業はIRの整備が認められた地域での事業の独占権を得ることから、ライセンス取得に向けての競争は激しいものになるだろう。

だが、一度ライセンスを獲得してしまえば、そのIRがその後の向上や改善につながる競争圧力を受けることはない。5月に行われたジャパン・ゲーミング・コングレスに出席したモルガン・スタンレーの香港のマネージング・ディレクター、プラヴィーン・チョーダリーは、「市場に競争がなければ、日本は自国にふさわしく、素晴らしいIRを実現することはできない」との見解を示した。

チョーダリーは、1社が100億ドルをかけて一つのIRを整備するよりも、3社がおよそ30億ドルずつを出資する方がより多様性のある施設にできるとの考えだ。

調査・コンサルティング会社グローバル・マーケット・アドバイザーズのブレンダン・バスマンは、大阪の夢洲や東京・横浜などに複数の事業者を開業させれば、より多額の投資と多くの観光客を呼び込むことができると指摘する。

「カジノの面積に関する制限はそのままでも、1カ所のIR施設に…複数の事業者の開業を認めれば、投資額は100億ドルを大幅に上回ることになるだろう」

ウィン・リゾーツ・ディベロップメントのクリス・ゴードン社長によれば、カジノ運営会社であるウィン・リゾーツは、「1棟の建物ではなく、エンターテイメント地区をつくりたい」という。

また、シンガポールのカジノ関連規則について助言を行ったスペクトラム・ゲーミングのマネージング・ディレクター、フレッド・ガシンは、「複数のホテルやゲーミング施設が一つのIRに集まることで、一定の相乗効果がもたらされ、それがそのIR全体に利益をもたらすことになる」と述べている。

編集=木内涼子

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