3Dプリントを活用 衝突実験用の「おばあちゃん人形」ができるまで

(Photo by Bill Pugliano/Getty Images)


プラスチックとゴムの合成素材を使った初の3Dプリント肋骨は、チームが求めた特性の多くをクリアしたが、衝突実験には耐えられなかった。

「プラスチック素材を使っていくつかの肋骨を3Dプリントしました」とデザインエンジニアのクリス・スレンバーガーは言う。「しかし、20回テストをすると、肋骨にはひびが入り始めました」

そこでHumaneticsは、デジタルテクノロジーを使ったものづくりを行うAdaptive Corporationにアドバイスを求めた。彼らはオニキス(Onyx)を使うよう提案した。マサチューセッツを拠点にする3Dプリンターメーカー、MarkForgedが開発する、ケブラー繊維によって強化された炭素化合物である。

「MarkForgedがつくった肋骨に150回以上衝撃を与えました」とスレンバーガーは言う。「それでも壊れることはありませんでした」

この成功に続いて、Humaneticsは肩、背骨、腰、肩甲骨、胸骨、腕といったほかのパーツをプリントした。3Dプリンターでつくられたパーツは、価格の面ではスティールのものと変わらない。しかし耐久性は3倍になり、より速くつくることができる。

肋骨のセットをつくるのに、従来であれば2〜3週間かかっていたが、いまや肋骨1本を24時間で、セットすべてを1週間以内でつくることができる。さらに3Dプリンターで鋳型をつくることで、組み立てにかかる労働コストが40〜60%削減できることもわかった。

Humaneticsはまた、3Dプリンターによって特定の器官だけをつくる試みも行っている。これまでは胸部や腹部といった身体の部位ごとにつくるのが普通だったが、3Dプリンターを使えば肝臓や脾臓といった器官だけをつくることができる。これによって研究者たちは、それらの臓器一つひとつが衝撃によってどのような影響を受けるかをよりよく理解できる。

いまのところ、Humaneticsはまだ2体の高齢者人形をつくっただけであり、それらもさらなるテストを必要とする。しかし高齢者人口が増えるなか、年配の乗客に焦点を当てるのは間違ったことではないだろう。2015年、米国で運転する65歳以上の人口は4000万人以上。これはアメリカの道路を走る5人に1人のドライバーが高齢者であることを意味する。

翻訳・編集=宮本裕人

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