ビジネス

2018.06.28

なぜデザイナーをビジネスに活かせないのか? 経営層が陥りがちな罠(後編)

坪田朋(左)、土屋尚史(右)


CXOを採るだけでは企業体質は変わらない
 
土屋:坪田さんはCCOとして、クリエイティブの側面から経営をサポートしています。企業とフリーランスが一緒に働くのは簡単ではないと話したばかりですが、先ほど話した大企業の現状を考えれば、CXOとして意思決定を担う人材の重要性はますます高まりそうです。
 
坪田:僕が経営の意思決定に関われているのは、ファウンダーである事が大きな要因だと思います。最近、課題として感じているのは、CXOを入れれば何か変化が起きると思っている人が多いが、経営者も率先して文化を変える動きをしていかないと根本的には何も変わらないと思います。
 
昔はスタンフォードといえばMBA(経営学修士)を取得するのがメジャーでしたが、最近は「d.school」というデザインスクールに通う人も増えている。こうした場を経て、そのままプロダクトを開発するケースもあります。
 
海外のデザインスクールから帰ってきたのに、そうした人を日本企業のCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)などの要職に採用した後、孤独な状態で任されダメになってしまったケースも何度か見ています。アカデミックやデザイン組織以外の場所での知識を持ち込もうとするのはとてもいいことなのですが、経営との連携が無いと上手くいきません。
 
土屋:それはもったいないですね。
 
坪田:その原因は、単独行動だからだと思うんです。クラシカルデザイン領域の裁量を与えられてもできる事が限られている。デザインの横断化、デザイン経営がが日本の大企業が抱える大きな課題。単独実行者が死んでいくのをどう改善するか。
 
土屋:会社が100人規模になってようやくわかりましたが、経営はチームプレイ。大企業になったらCDOをひとり入れただけで何かを変えるのは難しいです。
 
坪田:権限移譲も原因になりやすいですね。
 
土屋:今までなかったポジションだと権限移譲の仕方もわからないですからね。どこまでが社長の担当範囲なのか、といったナレッジも存在しない。
 
坪田:そういう部分は体系化したほうがいいかもしれませんね。
 
土屋:ただ、一度体系化してもちょっとしたことですぐに状況は変わってしまう。社長のタイプによって向き不向きがあるので体系化しづらい。
 
坪田:社長がUXに興味がある人だと、CXOと衝突しやすいんですよ。
 
土屋:CXOとしては、任せてもらいたいですよね。折り合いをつけることができればいいのですが、正面からぶつかると……。
 
坪田:ユーザー体験に興味があって手も動かしている社長の場合はこだわりがあるので、自分のリソース拡張としてデザイン責任者を採用するとダブルディレクションが起こるケースがある。とはいえ社長が経営業務に忙しくなり現場コミュニケーションが減ると意思疎通が難しいわりに、意思決定が移譲されない事もある。それだとデザイン責任者は中間管理職になってしまい、カルチャー醸成も難しい。

フリーランスなど外の人材と関わることが多くなっているので、組織内のチームワークは余計に大事になっているんですよね。
 
土屋:衝突しやすい業界もあるということですね。
 
坪田:単独活動に期待しすぎてもダメだし、かといってチームを構成するならそれぞれの強みを生かして社長とフィッティングさせなければならない。デザインに力を入れるといっても闇雲に人材を投入するだけではワークしません。デザインチームを会社全体で受け入れてあげることは大切です。僕も向き合いながら正解を見出していきたいと思います。

文=土屋尚史

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