トヨタも出資の自動運転シャトルバス「May Mobility」 米国で運行開始

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米デトロイトで新たな自動運転プロジェクトが始動した。1950年代から2017年にかけて人口が64%減少したデトロイトは今、景気の回復途上にあり、都市部の交通渋滞も悪化している。

デトロイトに暮らすほとんどの人は車で通勤する。ダウンタウンエリアでは朝晩の渋滞は特に深刻だ。地元の不動産大手「Bedrock」は従業員のために3台のシャトルバスを用意し、専用駐車場から本社ビルまでの5キロの道のりの送迎を行なっている。

しかし、ディーゼルの煙を吐き出すバスは環境を悪化させ、通勤ラッシュの時間帯以外はほとんど乗客もなく非常に効率が悪い。

この問題の解決に乗り出したスタートアップ企業が「May Mobility」だ。ミシガン州本拠の同社は6人乗りの自動運転EVバスを独自に開発し、Bedrockの社員向け送迎サービスを開始した。

May MobilityのEVバスの最高速度は時速約40キロという緩やかなスピードだ。しかし、このバスは既存のディーゼルバスに置き換わるポテンシャルを秘めている。同社CEOのEdwin Olsonは41歳。ミシガン大学教授の彼はフォードやトヨタの自動運転プロジェクトに関わった後、昨年1月に同社を設立した。

Olsonが提唱するのは「今あるテクノロジーを可能な範囲で、リアルな世界に適用していく」という理念だ。社員向けの駐車場から本社ビルまでの送迎という限定的なエリアで、自動運転を導入していく。このアプローチで事業をスケールできると彼は考えている。

May Mobilityのシャトルバスに採用された技術は、他の自動運転車が用いるものとほぼ変わらない。LIDARセンサーを用い、車両の周囲の状況を把握する。ただし、同社のシャトルバスの特徴は、運行ルート上に設置された様々なセンサーから無線信号を受け取ることで安全性を高めていることだ。

自動運転を語る上で、よく話題にのぼるのが「車両と道路インフラが会話を行なう未来」についての話だ。しかし、May Mobilityはごく短いルートに限定することで、その未来をリアルなものにしている。

同社のビジネスモデルは企業向けに、自動運転EVバスのシャトルサービスを提供するものだ。車両やメンテナンス、オペレーションの人員をパッケージで用意し、緊急時に対応するドライバーも同乗させている。

BMWやトヨタも出資

「自動運転を必要とするコミュニティは多いが、誰もそれを実現できていない。ハードウェアを製造するだけでは本当のイノベーションは起こせない」と同社COOのAlisyn Malekは話した。アルファベット傘下の「ウェイモ」や「GMクルーズ」が自動運転車両のテスト走行距離を競い合うなかで、同社の使命は「実際に役立つプロダクトを今すぐ消費者に届けること」だという。

May Mobilityはこれまで累計1160万ドル(約13億円)の資金を調達。先日は自動車部品大手の「マグナ」と提携を結び、EV車両の量産体制を整えようとしている。出資元には「BMW iVentures」や「Toyota AI Venture」をはじめ、Yコンビネータのような有力VCも名を連ねている。

デトロイトでのプロジェクトは昨年、Bedrockの社員向けのパイロットプログラムを実施した後、正式に始動した。安全性に疑問を持つ人もいたが、一度でも試せば不安は払拭できたという。May Mobilityはこのアプローチで、自動運転を人々の暮らしに浸透させていく戦略だ。

白とグリーンで塗装されたEVバスは、可愛くて親しみやすい雰囲気を醸し出している。「人々と信頼関係を築く上で、安心感のあるデザインにすることはとても重要だ」とMalekは話した。

編集=上田裕資

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