カナン・パートナーズはカナンベータの始動にあたり、2人の若きパートナーを任命した。Adina TeckluとHootan Rashidifardの2名だ。投資対象となるのはソーシャルメディアやゲーム分野のスタートアップで、1社あたり25万ドルから50万ドルのシード出資を行なう。
この実験的取り組みの指揮をとる2名は、それぞれのバックグラウンドを活かしたいと取材に述べた。Rashidifardはオクラホマ州出身のイラン系米国人。Teckluはヒューストン出身のアフリカ系米国人女性だ。カナン・パートナーズは彼らに、「次世代のスナップチャットを発見する」という使命を与えた。
「ジェネレーションZは米国の歴史上、最も価値観が多様化した人々だ。そのような観点から成功する企業を見極めなければならない」とRashidifardは話した。
Rashidifardは現在28歳、Teckluは現在27歳で、創業31年を迎えたカナン・パートナーズよりも若い世代だ。Rashidifardは投資銀行を経て、リンクトインに3年務めた後に同社に加わった。Teckluはオラクルに務めた後、2年間をZenefitsで過ごした経歴を持つ。
カナンベータは既に数社のスタートアップに出資を行なっており、その1社にブロックチェーンを活用したチケットの2次流通プラットフォームの「Tari」がある。Tariは他にも数社のベンチャーキャピタルと、仮想通貨のエキスパートの出資を受けている。
小規模なスタートアップへのシード出資の成功率は低いが、RashidifardとTeckluらは今後を楽観視している。「総額2000万ドルの資金があれば、25万ドルを80社に投資することも可能だ」とRashidifardは述べた。
カナン・パートナーズの出資先には「Instacart」や「Lending Club」、カーシェアの「Turo」やラグジュアリーEコマースの「The RealReal」といった有名スタートアップもあり、2人は経験豊富な先輩パートナーの助言をあおぐこともできる。
カナンベータのシード出資額は少額であるため、その後のシリーズAラウンドなどを成功させない限り、大きな業績は生み出せない。しかし、仮に25万ドルの100倍のリターンがあるとすれば2500万ドルになり、ベータ版のプロジェクトとしては成功といえるだろう。
このプロジェクトから次世代を担うスタートアップを見い出せれば、巨大な収益が見込める。また、次世代のスナップチャットのような企業を発見できなかったとしても、資金調達に苦戦する起業家を助けることは、これからの時代に大きな意味を持つ。
「スタートアップシーンには、既存の投資家のレーダーには探知できないタイプの創業者たちがいる」とTeckluは話す。カナン・パートナーズのチャレンジが成功を生み出したなら、他のベンチャーキャピタルも同様の試みを行なうに違いない。