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2018.07.03

「体験」こそが、投資家としての眼力を磨く

今年、創業60周年を迎えたアウトドア用品メーカー「スノーピーク」。同社に投資する筆者は、キャンプを通じて「人間性が回復した」と語る。投資先に学べば、必ず次の投資に生きると説く。


新潟県三条市にある「スノーピーク」というアウトドアに特化したメーカーに投資をしている。同社は「人生に、野遊びを。」という素敵なキャッチフレーズを掲げている。

もちろん私はこの会社の名前を知っていた。同社が上場をするときにそれなりの規模で投資をすることにしたのだが、それは弊社のWというファンドマネジャーからの強い推薦があったからだ。

「スノーピークに投資してください」

「ん、アウトドアの会社だよね。でも、そんなにみんなキャンプするの?」

「ふじのさん、ここは日本の宝です。絶対に投資をしてください」

Wは大学時代に山岳部に所属し、今でもよく山に登る。そこで、何度もスノーピークの製品に命を救われたそうだ。

このようなすばらしい会社は世界に誇ることができる、絶対に守るべきだ。儲かるかどうかはわからないけれども、もしそうでなかったら、もっともっと儲かる会社をほかにも探してくるのでこの会社に投資をしてください—。

Wはプロ意識の高い人間で、いつも確かな銘柄を持ってくる。決していい加減ではない。その彼がそこまで言うのだから、投資すべきなのだろう。もちろん、すべての投資は儲けようと思ってやるが、だからといって儲かるわけではない。でも、よい会社が必ずしも儲かるわけでもない。とはいえ、長期的に生き残り、社会にすばらしい成果を還元するのはよい会社がほとんどであるのは間違いない。

そこで投資をすることにした。結果的に、それはすばらしいリターンをもたらした(筆者注:ちなみにスノーピークという会社の銘柄の推奨ではなく、これから儲かるかどうかはわからない)。

それ以降、山井太(とおる)社長とは親しくさせていただいており、彼らが帯広で展開する「グランピング」を弊社の社員で体験することになった。弊社に縁のある会社のサービスを使うことも、ある意味では投資家による投資先への貢献なのだ。

グランピングとは、「グラマラス」と「キャンピング」を合成した造語で、「豪華なキャンプ」のことをいう。キャンプ場のキッチンカーで、プロの料理人がディナーを提供したり、キャンプのしつらえがおしゃれであったりするもので、「虫が出る」「汗臭い」といったキャンプの負のイメージを打破するものである。

私はそこで数日過ごしたのだが、キャンプ体験は高校生以来だった。それまでは、テントに泊まるのを楽しむ人がいることは十分理解していたけれども、自分でする気はまったくなかった。

「あんな真っ暗なキャンプ場で、布の入れ物の中で寝泊まりして何が楽しいの?」という気持ちがあったからだ。実際、懐中電灯を持ってテントに向かうのは心細く、おまけに雨まで降っていたので、寒く、決してよい環境ではなかった。
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文=藤野英人 イラストレーション=スズキ シゲオ

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