マネー

2018.07.03

「体験」こそが、投資家としての眼力を磨く


ところが、テントの中に入って電球を灯すと、ぼおっと光ってあたたかい空間がそこに現れた。

「なに、この圧倒的な安心感は!」

だがテントの中は寒かった。そこで、寝袋に入ることに。

「ん、この暖かさはなんだろう!すばらしい」

私は米国株の運用もしているので、夜に何度も目を覚ましてしまう。それは土日もそうだ。深夜に起きてアメリカ株の動向を確認してしまうのである。それで眠りも浅くなる。もちろん、米国株のトレーディングはちゃんと私以外のプロがやっている。

むしろ私は寝ていたほうがいいのだが、どうしても起きてしまうのだ。

ましてや今回はキャンプ場で、自宅のふかふかのベッドではない。きっと何度も目が覚めるだろうと思っていたら、朝まで一度も目が覚めず、ひばりの鳴き声で自然と目が覚めた。久しぶりにぐっすり寝られた。

─ああこれなのか─

スノーピークの山井社長は、キャンプの魅力は「人間性の回復」にあるという。野や山の中で寝たことで、私の中の自然が目覚めたのかもしれない。

自宅に帰って血圧を測ると、この半年間、上昇気味だった血圧が標準域に戻っていた。キャンプは血圧も下げるのか。これが森や山の力であり、人間は森や山で過ごすと、本来の自然の復元力が活性化されるのであろう。

投資家と投資先のありかたはいろいろあると思う。でもいつも思うのだが、投資先に投資した後に学ばされることの方が多い。そうやって私自身の知識や体験が増えることで、結果的にそれは私たちの顧客に投資成果として還元される。

それに、投資先のサービスや商品を体験することはその会社への支援にもなり、そこで獲得した知識や経験は必ず次の投資先を発掘する材料にもなるのだ。

回転寿司チェーンの会社に投資を検討したら、複数の回転寿司チェーンに行って実際に食べてみる。新しいレジャー施設にはなるべく行くようにする。「ポケモンGO」のようなアプリや仮想現実(VR)のゲームが流行れば、それも体験する。

自動車工場にも行くし、インターネットもSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も積極的に活用する。最新の半導体工場へも行くし、中国やアメリカの現場にも足を運ぶ...。それを弊社はチーム全体で積極的にやっており、それをチームで共有している。

今を生きていない人が、今に投資できるわけがない─。私はそう考えている。

野や山で寝る、ということも試してみたが、これはリラックスできるし、私の血圧を下げることもわかった。私の健康も、運営しているファンドのリスク要因である。

ということで、なんとスノーピークのエントリー商品のテント用品を買ってしまった。これから使うのが楽しみだ。リラックスも仕事だと思って、キャンプをする時間もこれからは確保していきたい。

連載:カリスマファンドマネージャー藤野英人の「投資の作法」
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文=藤野英人 イラストレーション=スズキ シゲオ

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