中国のビリオネア許家印が率いる恒大集団傘下の香港企業「恒大健康産業集団」は、ファラデー・フューチャーの株式45%を約8億6000万ドルで買収した。恒大集団が6月25日に提出した書類で明らかになった。
ファラデーの既存株主らは33%の持ち分を維持し、残りの22%は社員向けのインセンティブプログラムに放出されるという。
ファラデーは現在、ロサンゼルスに本拠を構え、かつて米国日産が入居したビルにヘッドクオーターを置いている。同社によると今回の株式売却による資金調達のディールは昨年11月にアレンジされたもので、先日になってアメリカの対米外国投資委員会の承認を得たという。
「今回の動きはファラデー・フューチャーがクリーンでインテリジェントなコネクティッドカーを世界に投入し、モビリティの未来を切り拓く動きを加速させる」と同社は声明で述べた。ファラデー創業者のジア・ユエティン(通称、YT)は同社のCEOに正式に就任した。
提出書類によると恒大集団は今後、さらに12億ドルを追加出資する予定で、2019年に6億ドル、2020年にさらに6億ドルを出資する予定だ。これによりファラデーはかつてYTが描いた、テスラのライバルになるとの夢に向けて前進することになる。
ファラデーは2017年1月のCESでフラッグシップモデルのFF 91モデルをお披露目したが、その後の資金難でネバダ州に10億ドルで建設した工場を操業停止にしていた。今回の発表で同社はカリフォルニア州ハンフォードの工場でFF 91の製造を再開し、年末までに出荷可能な状態にすると述べている。
ファラデーは社内の混乱にも直面していた。今年1月に同社は元CFOとCTOらを、機密書類を盗み出した罪と20名の社員を引き抜いた件で訴えていた。元社員らは別のEV企業を昨年12月に設立していた。
一方でYTは中国で裁判を抱えたままの状態だ。YTはかつて中国のコングロマリット「LeEco」を創業したが、その際の負債や税金が未納となっており、中国の財務当局からの要請にまだ応じていない。
ニュースメディア「South China Morning Post」によると、YTは米国に留まり続けながらFF 91の製造再開に向けて動いてきたという。中国メディアの報道では中国の裁判所は今月にもYTを、巨額の税逃れで起訴する見込みだと報じている。
クロスオーバーワゴンタイプの車両、FF 91の製造が順調に進めば、テスラのModel X SUVやジャガーのI-Paceのライバルになり得る。ファラデーのFF 91は2.39秒で時速96キロ以上に達する加速性能を持ち、1充電で600キロ以上の走行が可能だという。
さらに、顔認証やLIDARセンサーなどの洗練されたテクノロジーを搭載して自動運転を実現。自動パーキング機能も備えている。
EV業界では競争が激化しており、テスラのみならず中国の「Byton」や「NIO」らがしのぎを削り、欧州の大手メーカーらも次世代のEVカーの投入の準備を進めている。
しかし、今回の出資によりファラデーが強力な支援を獲得した意義は大きいといえそうだ。