ライフスタイル

2018.07.01 15:00

袖口を邪魔しない、スーツスタイルに「相応しい」腕時計

南青山にある完全予約制の紳士服店「DOT・TAILOR(ドットテーラー)」。理念は主観的なスーツではなく、気遣いが感じられる「相応しい」スーツという。テーラーの顔である松井陽介さんは、果たしてどんな時計をチョイスしているのだろうか。


隙なく着こなしたスーツの袖口からチラッと見えるシンプルな腕時計。まさにスーツと腕時計の調和。そのスタイルは見事であり、誰もが思わずその銘柄を訊きたくなるほどだ。

「時計を選ぶ際に、仕事柄もあってスーツを意識しました。まず、スーツを着こなす上でシンプルなものがいい。なによりも袖口を邪魔しない薄い時計にしようということは、はじめから決めていました」。

そう語るのは、世代や職種を超えて幅広い顧客を持つオーダースーツサロン「DOT・TAILOR」を率いる松井陽介さん。気になる着用モデルは、ヴァシュロン・コンスタンタンのドレスウォッチ、シンプルな二針の「パトリモニー」である。

「お客様に富裕層の方が多いので、そういう方々が褒めてくださるものを持つことを常に意識しています。基準は、流行りものではなく、この先もずっと愛されるものがいいと考えました。この時計は40㎜とやや大ぶりですが、嫌みじゃないですよね。自然にスーツと調和するんです。目の肥えたお客さまにもすぐに気がつかれ、褒めていただくことが多いです。なかには時計のことも教えてください、といってくる方もいらっしゃるくらいです」。

購入したのは、30歳のとき。きっかけは、お兄さんから「DOT・TAILOR」を受け継いだことにある。

「DOT・TAILORは兄と二人三脚で立ち上げ、3年前に兄から代表を受け継ぎました。兄からお店を任せるという話をされたときに“何か記念になるものを購入しよう”と考えたのがはじまりです」。

しかし、松井さんの頭にまず浮かんだのは腕時計ではなかった。

「私は高校を卒業してから2年間、自動車の整備士をやってたんです、なのでクルマが大好きで、当初はクルマを購入しようと考えていました。それで会社を経営されている先輩に相談したところ“何言ってるんだ”、と。クルマを所有することでもたらされる価値よりも“いまのお前に必要なのは絶対に時計から出てくる価値“なんじゃないかと言われまして」。

つまり「特別な価値を提供する仕事を選んだんだから、特別なものを身に着けなさい」ということだった。その言葉のとおり腕時計を購入することに決めた松井さんは、時計雑誌を読んで吟味したのちに、お店に足を運び「パトリモニー」を選んだ。

決め手は何だったんだろうか?

「実は一目惚れなんです」

接客で培った審美眼は、間違いないようである。



VACHERON CONSTANTIN/PATRIMONY

シンプルな2針モデル、パトリモニーは1950年代のヴァシュロン・コンスタンタンのモデルに着想を得て製作された。ケース、風防、インデックス、針が、どの角度から見てもゆったりとした曲線を描き、優美である。ケース径が40㎜と最近のドレスウォッチの中では大きめな感じだが、ケースが薄く腕との一体感があり、それほど大きさは感じない。巧みな装飾が施された自社製手巻きムーブメントは、ジュネーブ・シールを取得している。

ムーブメント : キャリバー1400 手巻き
パワーリザーブ : 40時間
ケース素材 : 18Kピンクゴールド
ケース径 : 40㎜
価格 : 2,100,000円
問い合わせ : ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755


松井陽介◎1984年生まれ。山梨県甲府市出身。自動車の専門学校を卒業後、自動車整備士として働く。のち、兄弟でDOT・TAILORを立ち上げる。2004年に兄から事業を引き継ぎ、代表取締役に就任。今年の3月には故郷である山梨県甲府市に新店舗をオープン。

text by Ryoji Fukutome illustration by Adam Cruft edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN 「富を生み出す人」の秘密」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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