ビジネス

2018.06.25

シリコンバレー注目の日本人、松岡陽子が「ネスト」に注ぐ情熱

(右)ネストCTO 松岡陽子(Photo by Jemal Countess/Getty Images)


「私を突き動かすのは、当初描いていたミッション。人々の暮らしに革新をもたらしたいという理念だ」と彼女は話す。「ネストの使命は家庭内のエネルギー消費に変革をもたらし、それを家の外に広げていくこと。デバイスやセンサーの技術に磨きをかけ、世界の人々の暮らしに役立つものに仕上げていきたい」

マツオカによると、当初は家の玄関のセキュリティカメラとしての利用を想定した同社のカメラの15%は現在、赤ちゃんの見守りカメラとして使用されているという。煙感知器を、年老いた両親の家の見守りデバイスとして利用する例も増えている。

ネストが最初に市場に投入した高価なサーモスタットは、年収10万ドル以上の高収入家庭での利用が主だった。しかし、その後は約150ドルの廉価版「Nest Thermostat E」もリリースした。エネルギーコストの問題は低収入の家庭において、より大きな問題といえる。この課題を解決するため、同社は今年4月に「Power Project」と呼ばれる取り組みを始動させた。

ネストは今後の5年間で100万台のサーモスタットを一般家庭に導入させようとしている。住宅ローンに特化した政府系の銀行「ファニー・メイ」やNPO組織の支援もとりつけ、Nest Thermostat Eを無料もしくはわずかな費用で設置可能にしていく。

専門家によると、エネルギー関連の支出は世帯収入の6%未満に抑えるべきだという。しかし米国ではエネルギー関連に収入の20%から50%を支払う家庭も珍しくはない。

「今後のネストの事業において最も大切なのは、消費者を第一に考えること。エネルギー関連の支出は人々の暮らしのなかで大きな位置を占めている。この問題を解決する手段を提供することが我々のゴールだ。ネストを人々の暮らしに欠かせないデバイスにしていきたい」とマツオカは話した。

編集=上田裕資

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