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2018.06.29

「いいね!」を得るほどに自分の「好き」は消えていく?

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コミュニティのなかでは、例えば「タピオカのつぶつぶが好き」とか、「冬の朝のにおいが好きすぎる」とか、「好き」にまつわるトピックがたくさんあり、自分も好きだなと思ったらハートマークを押していきます。そのトピックのなかでしか語れないので、おのずと「好き」をみんなで掘り下げていく形になり、自分が夢中になれること、好きなものへの再発見につながっていくのです。

若い人は、それほど意識的に無菌室な状態を作らなければ、自分が何を好きかを見失ってしまうほど、夢中になれる暇もないほど、膨大な情報量と承認欲求への誘惑のなかで生活をしているわけです。このことをまず認識することが重要です。

SNSとの距離感を調整してみる

例えば、僕の友人のライターさんは、このまま商業ライターを続けていくのかを考えた時、改めて自分の「好き」を見つけるために、SNS類を一切辞めたそうです。以来日記をつけるようになり、毎日の自己対話の中で、これまで他者に承認されるために文章ばかり書いてきたこと、その中で取りこぼしてきた自分だけのトキメキや、心動かされることがたくさんあったことに気づいたと言います。

それを数年続けたことで、幼い頃、物語を書くのが好きだった気持ちが蘇り、今は仕事のかたわら、小説を書いているそうです。また、創作の時間を持つようになったことで、これまでの仕事が一層楽しくなったそうです。

少し極端な例かもしれませんが、僕は人が本当に「好き」を見つけるためには、いっときでも孤独になる時間があっていいと思うのです。そういう時間が、自分の「好き」を鍛え上げてくれます。そのことをまず念頭においてみてもいいと思います。

連載 : 働き方革命最前線──ポストAI時代のワークスタイル
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文=尾原和啓

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