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格差の拡大を食い止める、新たな資本主義をつくりたい

──VALUが提唱されている「信用経済」(評価経済)について伺います。この言葉もずいぶん浸透してきましたが、そもそもなぜ信用経済を進めるべきだと考えたのでしょうか。

まず、信用経済はこれから訪れるのではなく、もうすでに訪れていると考えています。飲食店の評価を数値化する「食べログ」はわかりやすい例です。ユーザーのレビューや評価によって飲食店の信用が可視化されるようになりました。

こうしたサービスは当たり前になりましたが、社会的な観点から見ると課題もあります。それは信用による評価が一般になってきた社会の実態と、法律や制度が大きくかけ離れていることです。

例えば、私は新卒で入った会社を辞め、フリーランスのエンジニアをしていましたが、1年ほど死ぬ気でがんばって結果を出した後、社会人1年目の頃に住んでいたマンションと同じレベルのマンションを契約しようとしても審査が通らない。

また、社会人1年目の頃は150万円だったクレジットカードの上限額が30万円に下がってしまった。社会に出てから6年の間で能力は大きく伸びたにもかかわらず、社会的な信用が個人に紐づいていない。



それはなぜか。理由はいまの信用は大企業に属しているかどうか、資産額はどれくらいかといった物差しでしか測っていないからです。フリーランスや起業家が当たり前になった現代において、これは最適な形ではありません。

この社会の実態と制度の乖離を埋めるために、VALUを始めました。

──信用が重要になっている社会に合わせた新たな制度をつくりたい、と。VALUによって、どのような人に恩恵があるのでしょうか。

例えば地下アイドルに詳しいAさんと、企業の情報に詳しいBさんがいたとします。目利きという意味では同じなのに、いまの制度ではBさんだけが株式投資で資産を伸ばすことができる。Aさんはただ、オタク扱いされるだけです。

しかし、VALUを使ってこれから伸びそうなアイドルのVAを購入すれば、AさんもBさんと同じように資産を得ることができます。

さらにマクロな視点でいえば、そもそも現代の資本主義は格差を拡大する制度です。いま、日本にあるお金の総量は90年代前半に比べて2倍ほど増えています。それにもかかわらず、平均所得はほとんど変わっていません。それは増えたお金の多くが株式市場に流れているからです。

いまの社会は増えたお金を人々に流すのではなく、そのままお金(株式)にした方が利益を生む仕組みになっています。トマ・ピケティはこのことを『21世紀の資本』で「r > g」の式として示していました。つまり、投資家や株主だけがどんどん豊かになり、それ以外の人は相対的に損をしているということです。

そうした中で法定通貨に変わる新しい通貨として、いまの資本主義を変えると期待されているのが「仮想通貨」です。投機目的であれ、仮想通貨にこれだけ熱中する人がいるのは、現状の貨幣制度に不満がある人がたくさんいたからだと思います。そもそもいまの法定通貨に不満がなければ、仮想通貨を購入する必要はありませんから。

文=野口直希 写真=小田駿一

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