ボスではなく、「リーダー」でありたい
──CSに初出場したり、19年ぶりに日本シリーズに出場したり。ラミレス監督になって以降、横浜DeNAベイスターズは「勝つチーム」に生まれ変わったような気がしています。それは選手たちが「勝つ」という意識を強く持つようになったのが大きかったのでしょうか?
私が監督に就任するまで、チームはずっとBクラス(4〜6位)でした。そのポジションが当たり前になったチームをAクラスへと導くことは決して簡単なことではありません。
これまで、たくさんの時間を使ってきましたが、それで分かったことがあります。それは自分自身を信じることによって、チーム全体、ひいては選手をポシティブな方向へと持って行くことができるということです。
何より大事なのは自分の戦略を自分自身が最後まで信じる。そうすることで選手にも自分の考えをインストールさせることができます。自分の考えが途中でブレてしまっては選手も付いてきてくれないでしょう。
わたしは監督に就任以降、自分の考えは一貫しています。その結果、いまではチーム全体、そして選手それぞれが「自分たちは優勝できるんだ」という考えを持って、毎日プレーしてくれています。
監督就任1年目、チームスローガンを『WE PLAY TO WIN』に決めました。ファンからは「勝つためにプレーするのは当たり前だと」といったことを言われました。確かにいまでは当たり前のことだと思います。
しかし、当時は選手が「勝つ」ためにプレーできていませんでした。なぜなら、勝つことではなく競争することに意識が向いていたからです。
もちろん、チーム内でレギュラーの座を競争することも大事ですが、それが目的になってはいけません。あくまで、私たちの目的は試合に勝つ。そして優勝する。そのために毎日、全力でプレーしなければいけません。だからこそ、私は『WE PLAY TO WIN』というスローガンにしたのです。
──確かにいまのDeNAベイスターズは選手みんなが第一声に「勝つ」という言葉を口にしています。しかし、日本の組織の多くはトップの考えが組織全体に伝わらない。そういったことが多々発生します。ラミレス監督は自分の考えをチーム全体に広めるために、どのようなことを意識してコミュニケーションをとられたのでしょうか?
会社の社長は部下に「あれをやれ、これをやれ」と言うことが多く、部下からの話を聞く機会はあまり多くないと思います。それでは部下に自分の考えが伝わることはないでしょう。
わたしがよく言うのはボスではなく、リーダーでありたいということです。リーダーは部下と頻繁にコミュニケーションを図り、仕事の状況を聞きながら適切なアドバイスを送ります。社長と部下のように一方通行の指示からコミュニケーションが始まるのではなく、リーダーはまず相手の意見を聞くことからコミュニケーションが始まります。
そうすることで、リーダーへの信頼感が増していき、チーム全体がより良い方向へと向かうようになります。会社のオフィスビルで例えるならば、部下は1階にいるのに、社長は10階にしかいない。そのため部下の状況を確認することができません。
しかし、リーダーはどのフロアにも行き来し、会社全体の状況を常に把握するように努めます。その結果、リーダーへと相談しやすい状況が生まれ、会社の雰囲気が良くなるのです。