──欧州ではクリスティアーノ・ロナウドやネイマールなどワールドクラスの選手たちの社会貢献活動が目立ちますが、欧州と日本におけるサッカー選手の社会貢献活動はどちらが盛んだと感じますか?
正直、個人や団体の活動はあまり変わらないと思います。ただ、一般的に、海外の方がボランティアや社会貢献に対する考えや行動が文化として根付いているので、日本で行う活動よりも自然に感じる気もしますね。これにはサッカー云々は関係なく、日本人として自然な形で社会貢献ができるような空気づくりが必要だと思います。
──セレッソ大阪からドルトムント、マンチェスターユナイテッドと一流クラブを渡り歩き、各国のトップ選手たちと関わってきた香川さんから見て、サッカー選手としてだけではなく、社会に対して貢献意欲の高い選手、または国などはありますか?
個人で思うのは、マンチェスターユナイテッドに在籍していた時のチームメイトであるスペイン代表のファン・マタ選手ですね。彼は、自身の収益の1パーセントをチャリティーとして寄付する活動「コモン・ゴール」というプロジェクトを立ち上げて、僕の他にも、ドイツ代表のマッツ・フンメルス選手やイタリア代表のジョルジョ・キエッリーニ選手など、世界中の選手たちと活動をしています。
ファン・マタ(左)は親日家としても知られている(Photo by Laurence Griffiths / Getty images)
僕は日本で育ったアジアの選手なので、「アジアを中心にした活動をしたい」とマタ選手に伝え、今はアジア地域に対する活動を計画しています。彼の行動や、アクションは本当に尊敬しています。彼以外にも、欧州では多くの選手やチーム、組織がチャリティーに積極的ですし、そこに僕も力になれればと思っています。
──同じ代表メンバーで、欧州でも活躍していた本田圭佑さんは、ビジネスパーソンとしての活動も積極的に行っています。香川さんの目に、本田さんはどう映っているのでしょうか。
圭佑君は圭佑君の考え方、進む道がありますが、実際にアクションに起こしていることは素晴らしいと思います。彼の考え方や発言を聞いていると、何かを変えてより良い社会にしたいという強い信念を感じ、僕自身も学ぶが多いのでリスペクトしています。
スポーツ選手でプレーをする以外の時間をどう使うか、という観点では、圭佑君のようにサッカー以外で社会のためになるような活動をするのはとても良いことだと思います。最近は色々なアクションを起こすスポーツ選手も増えてきていますし。
──サッカー以外の時間の使い方のお話が出ましたが、今後世界で活躍するサッカー選手はこれからどうあるべきだとお考えでしょうか?
それは人それぞれの歩み方があると思います。人生の選択に正しい解があるわけではないように、その人が良いと思ったことに対して、ひとつずつアクションを起こしていけば良いんじゃないかなと。僕が圭佑君みたいに、起業家になってサッカーとビジネスの両立をしろといわれたら無理だと思うので(笑)
ただ、スポーツ選手は世の中に対してとても影響力のある存在なので、社会貢献活動に関しては、僕らのような人達が旗を振って推進していくことは本当に大切です。影響力があるからこそ、できることはたくさんあると思います。
──その中で香川さんご自身は、どのようなセカンドキャリアを描いているのかお聞かせください。
正直、セカンドキャリアまではまだイメージできていません。まずはサッカーを続けられるだけ続けていきたいし、できるだけ長く世界トップの舞台で戦っていたい。今ある時間は、できるだけ多くサッカーのために使いたい。それが僕の本心です。
ただし、その中で様々な形での社会貢献活動や、子どもたちへのグラスルーツ(※2)など、今の自分がだからできること、今の自分がやるべきことをやっていきたいと思っています。
※2 日本サッカー協会が掲げる豊かなスポーツ文化を育むための活動